約 886,150 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/538.html
身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ 谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか? 所変わって一年五組 人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ 俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ 不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている 俺としてはポニーテール萌えなんだがな 「あたしも扇いでよ」 俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな 「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」 「ふん」 また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている 担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる 大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った 眼を覚ませば夕方だった 服が汗を吸って濡れている まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな? 「…………」 誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする 「やっと起きたのね」 思わずゾっとしたね 感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な 声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい 涼宮ハルヒ 我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる 感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ 「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」 静かに言いはなつ うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは 「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」 無言で脛に蹴りを入れられた お前、それは反則だろう 「………!」 抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな? まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた 抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる 「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」 教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる ―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は 「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」 そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ 「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」 何でだ 「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」 そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ で、何で原因が俺にあるんだ 「心当たりは無いんですか?」 全くな 「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」 乙女心って何の話だ 「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」 何故俺が謝るんだ むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが 「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」 実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな 「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」 含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い 「そうですね、例えば………」 どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は 「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ 発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」 いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね 俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある 背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視 でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ 誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな 教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。 まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた 校門まで走ってようやく気付いたよ 俺はハルヒの家を知らないってことにな こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!! ………焦っているな。かなり焦っている 冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか! 「涼宮さんの家ならあちらですよ」 「………いつから其処にいた」 「そんな事気にしてて良いんですか? 早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、 ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」 またこのパターンか と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……? 走る、走る、走る 廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!! ………うん、暑いね 思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た 体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない 「おいっ!」 叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは 「!?………な、何よ」 何ってそりゃあ…………うん、何だろうね とりあえず謝れといわれたが………… プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな 「………スマン」 とりあえず深々と頭を下げた 黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ 呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる あぁ、コレで良かったんだよな とまぁ、今後の心配が一つ無くなった 「はいっ!活動をサボった罰ね!」 途端にコレは無いだろう ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな 「………なんだ、コレは」 「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」 マジか 「大マジ」 …………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は 「いやぁ、お疲れ様です」 ▼ニヤケ面が現れた!▼ →殴る 蹴る 暴行 うほっ ………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない 「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」 それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか? 「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」 そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない 「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」 言われなくともさ 俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな………… まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ …………なんてな すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか 目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな どうやら私服に着替えたらしいその人物……… 「………ハルヒ?」 そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな 「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」 「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」 「そ、それもそうよね…………」 何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか 「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」 いや、何もきいて無いですけど 「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」 それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。 「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」 ご理解いただけて光栄ですな 「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」 妹よ、いつの間に出てきた ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが……… 「キョン………」 何だ 「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」 「……何でこうなってんの?」 「さぁな」 今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ 「さ、どうぞ~粗茶ですが~」 あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも 帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である う~ん、詩人だねぇ ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か 「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」 感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺 「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」 い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが 唐突に、雷が鳴った 「……嘘」 ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう 先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる 多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ 「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」 「え、」 何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か 所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ? ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った 液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな 「………古泉」 『はい、何でしょう』 「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」 『いえ、寧ろその逆……でしょうか』 逆? 『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』 大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが 『………ホンット鈍感ですね。貴方は』 知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ 『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』 最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな 風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた 「天空×字拳!!!」 ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ 「………」 背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが………… 「ねぇ、キョン………」 扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな 「笑ったら死刑だからね」 そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか 解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ ハルヒがメイド服を着ていた き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……… 「…………」 「…………」 両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか? その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった 「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」 剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は 「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」 ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな 「で、何か用か」 「…………!」 おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか? 「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」 そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも ピシャァンといった感じに、雷が鳴った 「!」 「うおっ!?」 いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね ハルヒが、俺に抱きついていた 「げふぅ!?」 この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。 いや、抱きつきなんだけどな 握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い 「………ハル、ヒ?」 自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな それはさておき………どうするかねこの状況 「………悪かったわ」 ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン 「………雷、怖いのか?」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺 「…………悪い?」 怖いんですが、ハルヒさん なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略) それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ ………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな 「まぁ、落ち着け、ハルヒ」 と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない 「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」 ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ いや、駄目だよな聞き流してちゃ しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ 「まぁ、いいわ………」 ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!! ・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ しかし世の中そんな訳にも行かないんだな 「その代わり………一緒に寝なさい!」 「はぁ?」 いつもの如く、ビシィっと指を刺す 「団長を守るのは団員の役目でしょ!」 いやぁ、それも初耳だわ てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね? もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか? 今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな などと一般論を組み立ててみた物の ………正直、たまりません まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ 添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな 雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない ………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい 落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない 生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い 谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが 「…う……うぅ………」 ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる 其処まで怖いのか、雷が 「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」 言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな 年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ 「…………ずるい」 ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr ゴンッ ………ほらな 「ずるい!不公平よ!」 ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな で、何が不公平なんだ 「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」 泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ 考えている?ハルヒが?俺の事を? 「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」 ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる ―――ああ、そういうことか これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな 「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」 声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる 俺は、ハルヒを抱きしめた 「!?」 「…………平気な訳、無いだろ」 聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな 「俺だって、ハルヒが好きだ」 我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ 俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。 ……………妙に沈黙が怖い しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる 俺の唇に、ハルヒの唇が重なった 「……ん…………」 ハルヒの口から小さく声が漏れる 唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった 唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する それでも照れ隠しにと、俺は声を発する 「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」 ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ 案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく…… それも何処か嬉しそうな声で答えた 「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」 そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる 緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分 その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ 精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した 「………オヤスミ」 俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた 「ってきまーす」 そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている 回りくどく言ったが兎に角暑い 早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ 「キョーンッ!」 制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな 因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは 「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」 視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ? とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな――― end
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/99.html
・・・『嫉妬』と言う感情が、有機生命体には存在している。 そのように情報統合思念体に教わった。 私には、その感情が理解できない。というよりも、経験したことがないのでわからない。 私には縁のないもの。そう、思っていた―・・・。 『有希、用事があって今日のお昼一緒に食べれないや。ごめんね』 ハルヒに伝えられたのは、3時間目の休み時間。 私とハルヒは毎日昼食を共にする。しかし、用事があるのなら仕方ない。 『わかった。』 そう告げると、始業5分前の予鈴がなった。 ―・・・そして、4時間目終了のチャイムがなり、昼食の時間。 通常ならハルヒと共に昼食を食べているところ。 私はとりあえず、手を洗おうと廊下に出た。そのときだった。 ハルヒが、朝比奈みくるに抱きついていた。 …よくわからない感情が、身体の中をぐるぐる回る。 もやもやして、胸の奥を締め付ける。 『あ、有希・・・』 ハルヒが私を見つけ、こちらに向かってくる。 だが私は、なぜだかわからないがハルヒに背を向けてしまった。 本当になぜだかわからない。エラーが発生した。 ハルヒも追ってこない。私の中の『感情』というものにバグが発生したのかもしれない。 ―・・・その日の部室には、私とハルヒの2人だけだった。 静かな部屋に本のページをめくる音が響いていた。 しかし、彼女の言葉で沈黙はやぶられることになった。 『ねぇ、有希・・・どうしたの?』 『どうもしない』 私自身にもわからないのだから、どうもしないと答えた。 『どうもしない、じゃないわよ。なんだかいつもと様子が違うじゃない。』 『…』 私は何も答えずに、本に目を落とした。 『有希!話してるときは本を読まないのっ!』 そう言われ、本を閉じる。 『有希がおかしくなったのは昼休みよね?何があったの?』 昼休み・・・私は廊下で朝比奈みくるに抱きついているハルヒを見た。 そのときから私の様子が違うのだと言う。 『廊下で…朝比奈みくるに抱きついているあなたを見た。 あなたは、昼休みに用事があって昼食を共に出来ないと私に言った。』 『・・・へっ?』 『なのにあなたは朝比奈みくると行動を共にしていた。 私の様子がおかしいのだとしたら、それはきっとその時から。』 ハルヒの顔が紅潮してゆく。そして、私を抱きしめる。 『なぁに、有希・・・ヤキモチなの?』 『・・・ヤキモチ?』 ヤキモチとは、嫉妬のことだと、ハルヒが教えてくれた。 『ごめんね有希。今日はみくるちゃんの新しい衣装の採寸してたのよ』 『それにしても、有希がヤキモチ妬いてくれるなんて』 ハルヒは嬉しそうに笑った。 『ホントごめん・・・』 彼女の言葉を遮って、私はハルヒの唇に自分のそれを重ねた。 ハルヒの唇が離れる前に、無理矢理口をこじ開けて舌をねじ込む。 『んぅ・・・ちょ、有希っ!?』 ハルヒは私から離れ、顔を真っ赤にさせている。 『もう、ビックリするじゃない。』 ハルヒの言葉に返事はしなかった。そして、私は彼女の首に吸い付いた。 『ひゃっ!?』 私が彼女の首から唇を離した時、吸い付いたところは赤くなっていた。 俗に言う、キスマーク。 彼女は私のものという印。 『な、なにするのよ!!制服きても隠れないところにつけちゃって・・・!!』 顔を真っ赤にしながらまくしたてる彼女に向かって私はこう言った。 『あなたは私だけのもの。他の人には絶対に渡さない。』 これでもかと言うくらいに顔を赤らめる彼女に、また口付けをする。 嫉妬とは、相手をとても想っているということだと、理解した。 ハルヒは、私だけのもの。世界で一番、大切な人。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6247.html
無事ではないような気はするものの、とりあえず進級を果たした俺たちだが、 これといって変わりはなく、いつものような日常を送っている。 今日は日曜日で、全国の学生は惰眠を貪っている頃だろう。 諸君、暇かい? それはいいことだ。 幸せだぜ。 俺は、暇になりたくてもできないんでな。 日曜日。 ハルヒが黙っているわけもなく、金を無駄にするだけの町内散策・・・ いや、不思議探索の日となった。 今日も既に全員集合ときた。 いいんだ、もう慣れたよ。 もう、奢り役となって一年も経つんだな。 「キョン!はやくアンタもくじ引きなさいよ!」 分かってるさ。 ハルヒの手に収まった爪楊枝を引いてみる。 印付きか。 周りを見ると、ニヤケ古泉は印なし、朝比奈さんも印なし、長門も印なしを持っていた。 つまり、ハルヒとってことだな。 「珍しいですね。あなたと涼宮さんのコンビとは。」 「・・・長門と朝比奈さん襲ったらコロスぞ。」 古泉はフフフと微笑んだ。 気持ち悪い。 マジで襲ったらシメてやるからな。 「よし!じゃぁ早速行くわよ!」 ハルヒは俺のコーヒーをズズズとすすると、伝票を俺に突きつけた。 「早く来なさい!ドアの前にいるから!」 「キョン君、いつもごめんなさい。」 「いえいえ。」 あなたになら、店ごと買ってやっても構いませんよ。 と言いたいが、そんな金はねぇな。 いつもの様に財布を薄くし、自動ドアを出た。 古泉他二人はもう出発したらしく、希望に満ちたハルヒだけが立っていた。 「おっそいわよキョン!気合が足りないわ!」 「なんの気合だよ。」 「あのね!不思議もそんな甘っちょろいもんじゃないんだから!第一・・・」 ハルヒは後ろ歩きをしながら、俺に話しを聞かせた。 おい、後ろ道路なんだぜ、ちょっとは注意したらどうなんだ。 と思った矢先、向こうの車線から、ものすごいスピードで車が走ってきた。 おい、ハルヒ、危ねぇぞ! 「え?なに言ってんのよキョ・・・」 車は、ハルヒのすぐ後ろに迫っていた。 考えている暇はない。 俺は自分の出せるだけの力で、ハルヒを遠くへ突き飛ばした。 視界からハルヒが消えると、車が目の前にいた。 ******* 感覚がない。 どこからかざわめきが聞こえる。 そして、耳元では、いつものあの声がしていた。 「・・・ョン・・・キョン!」 ハルヒが、顔面蒼白の面持ちで俺に寄り添っていた。 頭がガンガンする。 体もバキバキだ。 周囲の声も聞こえなくなってくる。 やっと分かった。 ああ、俺はきっと死ぬ。 何気なく見やった道路は真っ赤に血染めされていた。 俺の血だ。 ハルヒは助かったんだよな。 神様が消えることはなかったぜ、古泉。 長門の観察対象もなくならない。 ああ、でもせめて最後に朝比奈さんのお茶をー・・・ 「キョン!?だめ!目を閉じないで!開けて!」 そしてハルヒ、俺、楽しかった。 最期に、ハルヒと不思議探索しそこねたな。 楽しかったぜ、ハルヒ・・・ 突然、目の前が真っ暗になった。 闇にいる。 ただひたすら、漆黒の闇の中にいる。 キョン・・・ ハルヒなのか? お願い、目を開けて・・・ 俺は、開けているつもりなんだ。 どこにいる? どこで泣いている? キョン・・・! その声と同時に、世界に光が差し込んだ。 いつかの閉鎖空間のように、バリバリと裂けていく暗闇。 目の前に、ハルヒがいた。 「ハルヒ・・・!」 思わず、叫んでいた。 しかし、ハルヒの目は俺を見ていない。 涙が溢れるだけだ。 そして、俺の真後ろを、さも俺がいないかのように見つめていた。 いや、俺はいないんだ。 「キョン・・・!嫌よ!バカキョン!目、開けなさいよ!」 振り返ると、そこには俺が寝ていた。 蘇る思い出。 ここは、消失事件の病室だ。 そこに、俺が白い顔で寝ていた。 血なんてどこにも付いていない。 まるで、寝ているかのように・・・ 俺は、死んでいた。 そして、今の俺は、幽霊だ。 ついに、異世界人になっちまったか。 天国という異世界のな。 「キョン!」 「ぅぇっ。キョンく~ん!目を・・・目を開けてくださぁ~い!」 「・・・。」 「・・・。」 珍しく、古泉も無言だった。 いつものニヤケ面なんてどこにもねぇ。 みんな、俺を見ていない。 ただ、 ただ、一人だけ、 長門と、目が合った。 ****** 病室から団員が帰る時、長門は俺に 「私の家に来て。」 と、聞こえるか聞こえないか、の声で囁いた。 ドアに触れることはできない。 でも、壁を簡単にすり抜けられた。 幽霊って、どこに逃げても付いてくるって本当だったんだな。 そんなことを考えられるほど、俺は冷静だった。 軽々と長門のマンションの壁をすり抜けると、いつものように置物状態の長門がいた。 「長門・・・。」 「待っていた。」 「お前、俺のことが見えるのか?」 「そう。」 やはり、万能選手だ。 「あなたが今日この世界から居なくなるのは、規定事項だった。」 「なんで言ってくれなかったんだ?」 「私にその権利はない。権利を握っているのは、情報統合思念体。」 「朝比奈さんも言ってくれなかったぜ。」 「朝比奈みくるも、朝比奈みくるの異時間同位体も、それは禁則に該当する。」 やっぱりな。 そんな未来を左右すること、未来人が言ってくれるはずがない。 朝比奈さん(大)も。 「朝比奈みくるの異時間同位体からの伝言を預かっている。」 長門は、俺にファンシーな封筒を差し出した。 朝比奈みくる と丸っこい字でかかれた封筒。 いつだったか、下駄箱に入っていたっけ。 キョン君へ ごめんなさい。 私はそちらへ向かうことができませんでした。 ヒントもなにも言えず、本当にごめんなさい。 そっちの私を面倒見てくれて、ありがとう。 あなたがいたから、今の私があるの。 あなたに出会えてよかった。 朝比奈みくる 向かうことができない、てことは、来ようとしてくれていたんだな。 ありがとう、朝比奈さん。 俺も、朝比奈さんがいてくれてよかったです。 でなければ、あの消失事件で、この世界に戻ることができなかった。 いや、それ以前に三・・・いや、四年前の七夕に行かなかったら、 きっとハルヒにも出会えていなかったさ。 「俺、もう戻れないのか?」 「戻れる可能性はある。私もその可能性のおかげでここにいる。」 「どういうことだ?」 「私は一度、死を経験している。」 どういうことだ? 長門は、情報ナントカに製造された人造人間なんじゃないのか。 「私は以前、普通の人間だったという記憶がある。 しかし、私は突然死に遭遇した。そこで彷徨い、偶然、情報統合思念体に出会った。 感情などの人間性を抹消し、データや情報統合思念体との連結を備え付けられた。 そして、涼宮ハルヒの観察を命じられ、今に至る。」 「俺には詳細が分からんが、お前は元幽霊ってことなんだな?」 「そう。以前、物語を書いた時に、それを題材に書いたはず。」 思い出すは、生徒会長に命じられ、無理やり作ったあの冊子。 幻想ホラーとい難しいお題の話を書いてたっけ。 どこかリアリティがあるのに、なんのことか分からないあの話。 私は幽霊だったのだ・・・みたいなこと書いてたよな? それって、長門、お前自身のことだったのか。 死んだ記憶だけを残されて、自分が何なのかも分からなかった長門。 自分の棺の上にいた人物・・・ それが情報統合思念体の一端末・・・ そこで長門は情報統合思念体と繋がり、自分を有希、と名付けたってワケだ。 「そう。ただし、あなたの可能性は、情報統合思念体と結合することではない。」 「じゃぁ、なんだ?」 未来人になって、TPDDを備え付けられるとか、 超能力者になって、あの神人を倒せ、とかか? しかし、長門はまた違うことを言った。 「あなたにとっての可能性は、涼宮ハルヒに必要とされること。」 古泉は以前、ハルヒは神だと言っていたっけ。 その神の力を最大限に利用し、生きろ、と言っているわけだ。 俺だって生きたいさ。 やり残したことだらけだ。 でも、俺が自分の意思だけを貫いたら、どうする? 俺が死ぬのは規定事項のはずだ。 俺が生きれば、未来にずれが生じるだろう。 また、朝比奈さんがベソかきながら走り回るに違いない。 ・・・俺だって、考えていないわけじゃないんだぜ。 「それはできない。」 長門は俺をじっと見つめたまま動かない。 「俺も生きたいけど・・・そんな、ハルヒの力を利用するなんてできねぇ。」 「そう・・・」 「死人は生き返らないんだ。」 長門はなにも言わなかったが、少し、悲しそうな表情をした。 長門には色々お世話になったさ。 朝倉に殺されかけたとこを、2回も助けてくれたんだ。 無限の八月を一人、記憶を持ったまま、助けも呼ばないで。 もっと、俺を頼ってほしかったさ。 なにもできなくとも、支えくらいならしてやれる。 「・・・ありがとう。」 長門は小さな声でそういうと、 本当に僅かだし、気のせいかもしれない。 でも、 少しだけ、笑った気がした。 「俺がこの世界に留まれるのは、いつまでなんだ?」 「涼宮ハルヒが望むなら、いつまでも。彼女には、あなたに対してやり残したことがある。」 「それを解明すればいいんだな?」 「そう。」 幽霊がいつまでも人間界にいていいもんじゃないからな。 「ただ、彼女がどんな非常識なことでも思ったことを実現させるということを忘れないで。」 「ああ、分かったよ。」 長門は、いつもの平坦な声で、更に続けた。 「あなたと私が話せるのは、最後。私はもうあなたを見ることができなくなる。」 「期限がある、ということなのか?」 「そう。その期限は、あなたがこの部屋から出るまで。」 えらい急な話だ。 いや、でも幽霊と人間がいつまでも話をするのは、変だな。 「うまく言語化できない。ただ・・・あなたには、色んな感情を思い出させてもらった。」 俺が? 長門に感情を? 「それらを全て、言語化するのは難しい。」 「俺でも、役にたったか。」 「感情が皆無だった私に、あなたはたった一つの光だった。」 「光・・・?」 「あんなに気にかけてくれたり、完結に言えば、大切な人であった。」 俺なんて、何もできてないぜ。 なんせ、何の能力もない凡人だ。 長門には、色々迷惑かけっぱなしだったのに。 「あなたと私がSOS団で繋がりを持てたのは、規定事項と信じている。 詳細は不明。でも、繋がりを持てて本当によかったと思っている。」 「俺も、長門と一緒に図書館に行けて、楽しかったぜ。」 また 図書館に 約束、守ってやれなくてごめんな。 「ハルヒを頼んだぞ。朝比奈さんと、古泉にもよろしく言っといてくれないか。」 「了解した。」 「あとのことはまかせろ。絶対に世界を終わりにしたりしねぇから。」 長門は小さくこくり、と頷くとそれ以上はもう何も言わなかった。 この壁をすり抜ければ、長門とはもう喋れない。 会えるけど、もう目を合わせることはできねぇ。 「じゃぁ、俺はもう行く。」 「そう。」 「じゃぁな、長門。」 長門は、もう一度小さく頷いた。 俺はそれを見届けると、壁をすり抜けた。 体が浮いていた。 情報統合・・・ナントカを、「くそったれ」と思っていたが、そうでもないかもしれない。 そいつがいなかったら、長門とは会えなかったからな。 もうすこし、お手柔らかにしてやってくれ。 情報統合・・・思念体。 ******* さて、ハルヒのやり残したこととはなんだろうね。 通夜にはたくさんの人が参列してくれていた。 「馬鹿野郎・・・なんで死んじまったんだよ。」 「キョン・・・最後まで格好よかったね・・・涼宮さんは、助かったんだから。」 谷口と国木田だ。 もう一度、バカやったり、一緒に弁当囲んだりしたかった。 「キョン君・・・寂しくなるよ・・・。」 いつもより元気が50割減になっている鶴屋さん。 あなたには笑顔のほうが似合ってます。 「うわぁぁぁぁん!キョンくーん!」 妹はわんわん泣き叫んでいる。 せめて、お兄ちゃんと呼んでほしいもんだ。 「キョンく~ん、寂しいです・・・」 朝比奈さんは、目を真っ赤に腫らせていた。 そんなに泣かないでください。 素敵なお顔が大変なことになっていますよ。 「残念です。すてきな仲間だというのに・・・」 古泉は、ニヤケ面をどこに置いてきたんだ、という顔をしていた。 すてきな仲間。 素直に嬉しいぜ。 「・・・・。」 長門は終始無言で、俺の遺影をじっと見つめていた。 「・・・・・・・・・・・・。」 そして、ハルヒは泣いていなかったが、目は腫れていた。 そりゃ、あんだけ泣いてたんだ。 団長さんよ、SOS団を頼んだぞ。 雑用兼財布係はもういない。 けど、世界を終わらしたりしないでくれよ、ハルヒ。 ******* 数日経てば、ハルヒの元気も戻るさ、と思っていたが、そうではなかった。 静まり返った文化部・・・SOS団の部室に、俺はいた。 誰とも目は合わない。 いつもの指定席に座るハルヒは、外をじっと見つめたまま動かない。 古泉もゲームを取り出すことなく、じっと一点を見つめていた。 まるで、全てが喪失してしまったかのようだった。 俺は・・・こんなSOS団を望んでいない。 ハルヒだってそうだ。 結局その日は、誰一人口を開く者はいなく、そのまま解散となった。 ハルヒの跡をつけてみた。 ハルヒの後姿はとても小さく見えた。 異変に気付く。 ハルヒ、そっちはお前の家の方向じゃねぇだろ? そっちは確か・・・俺が死んだ場所・・・ 予想は合っていた。 俺の事故現場には花がたくさん手向けられていて、ハルヒはそこに手を合わせた。 「キョン・・・キョンのバカ・・・なんであたしなんか庇って・・・」 バカ、て・・・ 「死んだなんて嘘よ!戻ってきて・・・お願い・・・。」 ハルヒ、しっかりしろ。 俺はもう死んでるんだぞ。 お前がしっかりしないでどうするんだ。 「うぅ・・・キョン・・・。」 ハルヒはその場に泣き崩れた。 街行く人たちが、ハルヒにちらりと視線を送っていく。 一番星が出ていた。 ****** 事件は早々に起きた。 俺は、急に意識が飛んだ。 幽霊に意識があるなんて、初めて知ったよ。 真っ暗な世界。 まるで、眠っているような感覚だった。 「・・・・ン・・・?キョン?」 聞き覚えのある声。 目を開くと、そこにはハルヒがいた。 すぐ、なにが起こっているのか、分かった。 灰色の空間。 いつかの、閉鎖空間。 神人はまだいない。 あの日目覚めた時と同じ場所。 「キョン!?どうして?生きてる、本物?」 「ハルヒ・・・。」 「バカ!どうしてあんな・・・!」 「ハルヒ。」 俺はハルヒの言葉を遮った。 ハルヒは、また、俺と2人の世界を望んだんだ。 戻ってきて・・・お願い・・・ この言葉は、本当のことになった。 長門は言った。 ハルヒの力を忘れてはいけない、と。 「俺は、死んでるんだ。」 「どうして!?今、現にここにいるじゃない!」 「ここは、夢なんだよ。」 「え・・・。」 「前にも、ここに来なかったか?」 丁度、一年前くらいか。 ここで、ハルヒとキスをした。 あれは夢という記憶になっているが、現実なのだ。 「え、キョンも同じ夢を見たの?」 「ああ。たぶん、ハルヒと同じ夢だと思う。」 「戻ろう。こんなところ、ずっと居るもんじゃない。」 手を引こうと、ハルヒに近づくと、俺はハルヒに引っ張られた。 顔がぶつかるのを、寸前で止めた。 「嫌よ。」 ハルヒは真剣な目をしていた。 こいつも、本気なようだ。 「あたしはあんたがいればそれでいい。ここであんたが生きれるなら、あたしはこの世界を選ぶ。 あんた、幽霊なんでしょ?天国の人、異世界人じゃない!私が探していた、最後の不思議。 そして、ずっと探していたわ。 ジョン・スミス」 俺は、驚いた。 ジョン・スミス。 なんでハルヒが知っている? 「あんたが死んだ日、夢を見たの。あたしが中学の時、校庭に書いたメッセージ。 それを書いた人よ。それ、あんただったのよね。あの時のあたしは、ジョンの顔が 見えなかったわ。でも、夢のジョンは、顔がよく見えたの。」 「な・・・」 「あたしを理解してくれて、あたしの初恋の人。」 「・・・」 「それが、あんたよ、キョン。」 つまり、ハルヒは夢で時間遡行をしたんだ。 全ての原点の4年前に。 そうか、その時から俺は異世界人だったんだな。 違う時空から来てんだ。 異世界人で間違いねぇだろ。 「もう、不思議なんて探さなくていいわ!あんたが最後の不思議だもの!」 「ハルヒ・・・。」 「嫌よ、あんたのいない世界なんて、価値はないの!」 ハルヒは、大きな目から涙をこぼした。 まるで、訴えるような目。 「キョン、あたしはあんたが好き。」 「!」 「ずっと、そうだった。精神病でも構わない。だから、お願いだから・・・」 ・・・ああ、俺だってそうだったさ。 自己中心的で、我がままで、無駄に元気で、笑顔が似合ってて、優しいハルヒをな。 「ハルヒ。」 ハルヒは目に涙を溜めたまま、俺を見上げた。 「俺は、元気なお前が好きだった。でも、今のお前は違う。」 「・・・。」 「SOS団だって、元気のカケラもねぇじゃねぇか。」 「あんたがいないから・・・。」 「俺は、こんな世界望まない。」 俺はその場にしゃがみ込み、ハルヒを見上げた。 「SOS団はどうなるんだ?せっかくあそこまで仕上げたのに。 ハルヒ、まかせてもいいよな?」 「あたしをなんだと思ってるのよ、団長様よ?でも、あんたがいないのは嫌。」 「俺は死んでる。死んだ人は生き返らない。」 ハルヒの目から落ちた涙が、俺の顔に落ちた。 あったけぇ。 「大丈夫だ。俺は待っている。何年でも、いや、何十年でも、何百年でも。」 「・・・。」 「お前はゆっくり来い。大丈夫だから。」 「・・・待ってないと、死刑だからね。」 死刑は嫌だからな。 俺は、ハルヒを連れて校庭の中心へ行った。 神人はいない。 青白い世界。 こんな世界より、ハルヒには希望に満ちた元の世界で生きてほしい。 「ハルヒ・・・好きだ。」 「あたしも、好き。」 ハルヒの小さな肩に手を置く。 「俺は・・・ ここにいる。」 ハルヒの涙だらけになった顔が近づき、俺はハルヒにキスをした。 一年前のように、嫌々なんかじゃない。 俺も、ハルヒも望んでいる。 元気なハルヒが大好きだった。 引っ張られっぱなしのあの日常も、俺は大好きだったさ。 やがて、目を閉じていてもまぶしいくらい、周りが明るくなった。 元の世界が閉鎖空間と入れ替わる。 それと同時に、光も消えていった。 その光と共に、俺の体も消えた。 ハルヒ、大丈夫だ。 俺は、ここにいる。 *お*わ*り*
https://w.atwiki.jp/haruhi_dictionary/pages/67.html
人物画像 基本情報 性格・容姿愛称 正体 能力閉鎖空間 時空改変能力 ループ現象 神人 情報爆発 時間震動 超能力者の発生 分裂 その他消失涼宮ハルヒ 渡橋泰水(わたはしやすみ) 超勇者ハルヒ 涼宮ハルヒ(スーパーSOS大戦) 偽涼宮ハルヒ その他(対極関係者) 脚注 関連記事 関連人物 人物画像 基本情報 声優は平野綾。 本作のメインヒロイン。県立北高校1年5組(第9巻『分裂』より2年5組)の女子生徒であり、SOS団団長。 キョンと同じクラスで、キョンのすぐ後ろの席に座る(何回席替えをしても、ハルヒの能力のためか位置関係は不変)。 学業の成績は学年上位に位置しており、身体能力も高く入学当初はどの運動部からも熱心に勧誘されていたほど。 また料理、楽器演奏、歌唱など多彩な才能を持っており、キョン曰く「性格以外は欠点は無い」。 東中時代は変人だと露呈していたが美少女ゆえに多くの男子に告白されて必ずOKしていたが、相手が「普通の人間」であることを理由にことごとく振っていた。 自分の都合のいい言葉しか耳に入らず、それ以外の言葉は聞き流す。 感情の起伏が激しく、情緒不安定になりやすい。また、退屈を嫌っており、何か面白いことをいつも探している。 己の目的のためには手段を選ばず、時には恐喝や強奪まがいの行為に及ぶこともある。 「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」という持論を持つが、キョンの言動に極度に大きく機嫌が左右されたり、 キョンの過去の恋愛をやけに気にしたりしている。事実、劇中でキョンとみくるが同じペットボトルを使いまわす(間接キス)事を止めたシーンなどがある。 第10巻『驚愕(前)』(β-7)にて、長門が熱を出して学校を休んだため、SOS団初の活動休止宣言をした。 性格・容姿 一人称は「あたし」。身長158cm。 黒髪黒目の美少女で、プロポーションはキョン曰く「スレンダーだが、出るとこは出ている」。 入学当初は腰まで伸びるストレートヘアで曜日ごとに髪形を変えていたが、キョンにそのことを指摘されて以降は肩にかかる程度の長さで揃えている。 黄色いリボン付きカチューシャがトレードマークで、小学校時代から愛用している。 普段着は女の子らしい格好が多いが、時にはアウトドアな服も着る。 彼女の書く字は、キョン曰く「元気文字」【2】。 みくるや鶴屋さん、生徒会長など、年上の人物に対しても敬語を使わずタメ口でものを言う(初対面の者との挨拶などは、例外的に丁寧語を使う)。 口癖はキョン曰く「全然」らしい【3】。 唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌いであり、「校内一の変人」としてその名は知れ渡っている。 普段は自分勝手でエキセントリックな性格が目立つが、根底には常識的な感覚も持ち合わせており、宇宙人等の不思議な存在がいて欲しいと思う反面、 そんなものはいるはずない(少なくともそう簡単に見つかるはずがない)とも思っている矛盾した思考形態を持っている。 物語が進むにつれ人間的に成長したのか横暴さは僅かずつではあるが治まっていく。 また、長門が高熱で倒れたり【4】、キョンが事故で3日間意識不明に陥った際には【5】、必死に看病したり体調を気遣ったりするなど、仲間思いの面も強く見せることもある。 愛称 キョンからは「ハルヒ」、鶴屋さんとキョンの妹からは「ハルにゃん」と呼ばれている。 正体 「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」力を持つ神的存在。そのため様々な組織が彼女に関心を抱いている。 しかし本人はその力に全く気付いていない。 また、似たような能力を持つ佐々木と非常に近い存在であるが敵対という関係ではない【6】。 能力 無自覚の内にハルヒの願望が具現化され、キョン達は毎度それに翻弄されている。 その力のおよぶ範囲、期間等はハルヒの機嫌や望みの強さに影響されるため、法則性がない。 なお彼女の能力が際限なく発揮されたりせず、世界がいまだにバランスを保っている点について、 古泉は「彼女自身が奇抜な言動に反し常識的な精神をしており、不可思議な物事を心のどこかで否定しているから」と推測している。 一方でみくるは、「ハルヒの力は『世界を変える』ものではなく、最初から起こることであった『超自然的存在を無自覚に発見する能力』」としており、 組織によって見解は異なる。 閉鎖空間 「内面世界」のこと。 精神が不安定になると発生する空間で、古泉ら「機関」の超能力者が侵入可能。 (詳細は「超能力者関連」の項を参照) 時空改変能力 周囲の環境情報を操作し、非常識なことでも実現可能な能力。例として、秋に桜を満開にしている。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) ループ現象 第5巻『暴走』収録の「エンドレスエイト」、ゲーム『約束』、『戸惑』、『並列』にてハルヒの願望によって起こった現象。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) 神人 閉鎖空間にて、ハルヒのストレスが具現化した存在でストレスを発散するために周囲の建物を壊す。 情報爆発 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。詳細は謎のままである。 (詳細は「宇宙人関連」の項を参照) 時間震動 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。詳細は謎のままだが、未来人はこれより前の時間遡行が不可となっている。 (詳細は「未来人関連」の項を参照) 超能力者の発生 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。古泉に力を与えたようだが、詳細は分かっていない。 (詳細は「超能力者関連」の項を参照) 分裂 第9巻『分裂』にて起こった現象。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) その他 消失涼宮ハルヒ 登場作品は第4巻『消失』。古泉と同じく、改変世界にて共学となった光陽園学院の生徒となっており、髪型も北高入学当時の髪型であった。 キョンのことを知らなかったが、キョンからジョン・スミスであることを告げられ、繋がった。 また、北高の前で張り込みもしていたらしく、キョン(ジョン・スミス)が出てくるのを待っていたようだ。 渡橋泰水(わたはしやすみ) 初登場は第10巻『驚愕』(前)のα-9。ハルヒの入団試験を唯一突破し、入団した新人部員。ニコちゃんマークに似た髪留めをつけている。人懐っこい性格。 第9巻『分裂』のα-1にて、入浴中のキョンに電話を掛けてきたのが彼女である。古泉曰く純粋な個人で、長門曰く北高に在籍しておらず、宇宙人でも、未来人でも、 超能力者でも、異世界人でもない。αルートのみならず、βルートとも行き来できる。 その正体は藤原の歴史改変計画と、キョンと長門の危機を無意識に予知していたハルヒが無意識に作り出したもう一人のハルヒ。 藤原たちを止めるためには、「佐々木の閉鎖空間」に閉じ込められたキョンのもとに古泉たちを導く必要があり、 「佐々木の閉鎖空間」の中に古泉が侵入できる「ハルヒの閉鎖空間」を作る状況にするために世界を二つに分岐させる。 そしてβルートのキョンたちが「佐々木の閉鎖空間」の部室に着くのを見計らって、αルートのキョンを部室に呼び出し、 最後に二つの世界を統合させて「ハルヒの閉鎖空間」を呼び出した。閉鎖空間内において神人を操作する事も可能な力を見せた。 超勇者ハルヒ ゲーム『戸惑』にて完成したゲームの一つ「SOS団 QUEST 勇者と導かれし従者」にて登場する。「超勇者」と書かれた腕章を付けており、サーベルを武器とする。 涼宮ハルヒ(スーパーSOS大戦) ゲーム『戸惑』にて作成したゲームの一つ「スーパーSOS大戦 -地球が情報操作される日-」にて登場する。 キョンと長門のピンチを救うため、古泉、みくるとともに朝倉の異空間へと侵入する。 偽涼宮ハルヒ ゲーム『直列』のEpisode5「誰も寝てはならない」にて、昇降口にある鏡に映った。 性格はオリジナルとは正反対であり、自我を持たない。また、本人はいないはずだったが鏡に映り、目つきも他の偽物同様、怖くなっている。 その他(対極関係者) 佐々木 脚注 第8巻『憤慨』収録の「編集長★一直線!」70頁より。 第1巻『憂鬱』より。 第5巻『暴走』収録の「雪山症候群」より。 第4巻『消失』より。 第9巻『分裂』(β-4)より、キョン曰く「こいつ(佐々木)は敵にならない」。 関連記事 神的存在関連 関連人物 キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん キョンの妹 谷口 国木田 阪中
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2977.html
涼宮ハルヒの約束 「あんたさ、自分がこの地球でどれほどちっぽけな存在なのか、自覚したことある?」 いつだったか、お前はそう言った。 あの時お前の言ったとおり、俺は本当にちっぽけな存在だと思う。 長門や古泉や朝比奈さんのような特別な力なんて、生憎持ち合わせていないからな。 だがハルヒ、お前は違うだろう?お前はこの地球の中心といってもいいくらいの存在だろう? なのに、なぜだ。 涼宮ハルヒは、3年前に息を引き取った。 俺たち普通の人間と変わらず、ハルヒの死は突然に、そして静かにやってきたのだ。 ハルヒのことだ。 もし間違って死んでしまったりしても、きっとあいつの意味のわからん能力かなんかで生き返ってくるものだと俺は思っていた。 今死ぬことをハルヒは望んでいない。必ず生き返ることを望むはずだ。 三年前の俺は、そう確信していた。 だが、ハルヒは戻ってこなかった。 俺はハルヒの死を理解することなどできなかった。 安らかに眠るあいつの顔だって見た。冷たくなってしまったあいつの手だって握った。あいつの葬式にだって行った。墓参りにだって何度も行っている。 何度現実を突きつけられても、俺はまだわかっていない。 俺はハルヒが戻ってくることを信じてやまないのだ。 三年前、ハルヒが死んで、俺たちSOS団はバラバラになった。 朝比奈さんはハルヒが死んだ直後の病院で、泣きながら、しかししっかりとした口調で俺たちにこう告げた。 「涼宮さんが死ぬことは規定事項なのかどうか・・・私には、わかりません。・・・ 何も、わかりません・・・。 でも、一つだけわかることがあります・・・。未来に帰らなければいけないのは、今、ということです。 短い間でしたが・・・本当にありがとうございました。皆さんに会えてよかったです、本当に・・・。 もう会えないかもしれないけど・・・」 涙で詰まったのか、朝比奈さんは一度うつむいた。そして顔をあげ、少し無理矢理な笑顔を作り、 「さようなら」 まっすぐ俺の顔を見ながら言った。 朝比奈さんは、薄暗い病院の廊下をゆっくりと歩いて行った。小さく震えている背中を見届けながら、俺たちは何も言えずにいた。 何か言うべきだったのかもしれないな。だけど、その時の俺の頭には言葉なんてものは存在してなかったように思う。 古泉はハルヒの葬式が終わった後、 「・・・とても残念です。残念としか、言い様がありません。私たち機関はもう能力を使うことはないでしょう。 使いたくても使えない。涼宮さんが居なければ、私たちはこんなにも無力なのですね。何が超能力者だ・・・と。」 長門以上に無言を貫く俺に、古泉は喋り続けた。いつもより力なく、いつものようにうざったいアクションをつけながら。 「機関は解散しますが・・・僕にはやらなくてはならないことがたくさんあります。 ・・・後始末、とでも言いましょうか。」 お別れですね、と寂しげな笑顔を見せながら俺に言うと、どこからともなく黒い車が古泉を迎えにきた。古泉も俺も、お互いに手を振ることのないサヨナラだった。 どこへ行ったのか、後始末とは何なのか・・・俺は何も知らない。あの日以来、俺は古泉に会っていない。 長門はというと、ハルヒが死んだ日以来顔を合わせていない。葬式に顔を出さなかった長門を俺は不審に思い、その帰りに長門の家に寄ったのだが、部屋は既に蛻の殻となっていた。 あいつも、情報統合思念体とやらのところに帰ってしまったのだろうか。 そうして俺は一人になった。 高校を卒業し、今は大学生だ。普通レベルの大学に合格し、一人暮らしをしながら普通の毎日を送っている。 ハルヒと出会う前のような、フツーの日常を。 友達だってそれなりに居るし、今、彼女だって居る。傍から見れば充実した毎日を送っている。 でもな、ちっとも楽しくなんてないんだよ。 朝比奈さん、長門、古泉・・・そしてハルヒ。 お前らが居ない毎日が楽しいわけなんてないだろうが。 一日たりともお前らを忘れた日なんてないさ。 こんな日常・・・あまりにも普通すぎて、一人で不思議探索にでも出かけたくなるほどなんだ、ハルヒよ。 寂しいじゃねーか。 俺を一人にしないでくれよ、ハルヒ。 お願いだ。 戻ってきてくれよ、ハルヒ―――。 静かな部屋に、携帯のバイブ音が響く。 一人物思いに耽っていた俺は、その音にびっくりし体を一瞬震わせた。 急いで携帯を取ると、画面には彼女の名前と番号が表示されていた。 「ああ、俺だ。どうした?」 『ねぇ。もちろん明日、空いてるわよね?ちょうど休みだし』 「明日?・・・ああ、別に用事はないが。明日がどうかしたのか?」 『・・・冗談でしょ?覚えてないの?明日は半年記念日じゃない』 「ああ・・・明日で半年だったか、すまないな」 『・・・記念日、覚えてくれてたことなかったよね・・・』 「・・・すまん」 『・・・まぁいいわよ。半年記念日前に喧嘩なんてしたくないもの。』 「ああ・・・すまんな。・・・明日はどうする?」 『キョンの家、駄目かな?』 「ああ、そうしよう。午後、適当に来てくれよ。じゃあな。」 電話を切り、俺はため息をついた。 明日で彼女に告白をされて始まった交際も半年になる。 断る理由が特に無かったから付き合っただけで、別に俺には好きという感情がなかったりする。 彼女はしょっちゅう俺に会いたいと言う。きっと彼女の方は俺の事を愛してくれているのだろう。 でも、俺が彼女に会いたいと思う時は、俺の中の男が女を求めた時だ。 我ながら最低だと思う。 ハルヒだったらこんな俺になんて言うだろうか。 引っ叩かれる・・・いや、それどころじゃ済まないだろうな。 俺は不意にカレンダーを見た。 今日は7月6日、明日は7月7日だった。 七夕・・・か。 次の日、午後2時過ぎに呼び鈴が鳴った。彼女だ。 「おじゃましまーす」 「ああ、ちょっと散らかってるけど気にしないでくれ」 俺がそう言うと、これのどこがちょっとなのよ、とぶつぶつ言いながら彼女は部屋を整理し始めた。 あんまり動かしてほしく無い気もするのだがな、片付けるのは確かに面倒なので俺はしばらく何も言わないでいた。 彼女の片づけている手が男の秘密ゾーンに伸び始めたところで声をかけ、片づけを中断させる。 そうすると彼女は思い出したような表情をし、カバンをがさごそとあさりはじめた。 「はいキョン!この本、読みたがってたじゃない?今日寄った本屋でたまたま見かけたから買ったのよ。」 「おお、ありがとうな」 「読んだらあたしにも貸してよね」 本を受け取ると、彼女はゆっくりと俺の体に腕を絡ませる。 俺たちはその状態のまま少し他愛の無い話をしていたが、しばらくすると彼女の唇が 近づいてきたので、俺はそれに答えようと本を置いた。 ―――その時、本からしおりのようなものがハラっと落ちた。 しおり・・・ まさか、長門か? 「待った!」 「わっ!!何!?」 少し大きな声を出し、彼女の体を強引に剥がすと俺は急いでしおりを拾った。 ぶつくさ文句を言っている彼女を尻目に、俺の目はしおりに書かれた綺麗な明朝体を 認識する。 あの公園で待っている 長門だ。 こんなやり方は長門しかありえない。 長門に違いない。そう思いたいのだ。ただの偶然のいたずらなら暴れるぞ。 とにかく、これは長門からのメッセージであり、あの公園とはあの公園だ。 俺の脳裏に、ハルヒがよぎる。 「なによ・・・どうしたの?なにそれ」 「すまん、たった今用事ができた」 「はあ?ちょっと何言って・・・」 「悪い、埋め合わせは今度する!家を出なくては」 「ちょっと、何よわけがわからないわよ!」 彼女の荷物を拾い、強引に手を引いて家を出る。わけがわからないであろう彼女は懸命に俺を引きとめようとするが、湧き上がる感情でいっぱいだった俺は、彼女が納得できるような上手い理由を考えることなどできるわけがなく、そのまま自転車に飛び乗る。 終いにはものすごい剣幕で怒鳴ってきた彼女に、俺は「本ありがとう」とだけ告げ、 ものすごい馬力でペダルをこぎ始めた。 一人暮らしをしている今、あの公園はそんなに近くなく、三駅ほど離れていた。だが、電車を待つ時間は今の俺にとって普段の100万倍増しに苦痛だったからな。 今までこんなに早く自転車を飛ばしたことがあっただろうか。 ペダルの回転が速すぎて足が空回りしそうになりつつ、俺は公園の入り口を急カーブで突っ切る。 ベンチに目をやる。 そこには、紛れもない長門の姿があった。 あまり変わってはいないが、少し大人びたように見える長門が俺を待っていた。 「・・・長門ッ!!」 俺は半ば転ぶようにして自転車から降り、荒い息で長門の名を叫ぶ。 「・・・久しぶり」 そんな俺の叫びにも動じない、三年前と何も変わらない淡々とした声。そして三年前と何も変わらない深海を切り取ったかのような瞳が俺を見つめる。 俺はなんだかひどく安心し、そしてひどく懐かしさに襲われた。不覚にも涙が出そうになる。 「長門・・・お前・・・今までどこで何してたんだよ」 「言語化できない。それより、私は今あなたに話したいことがある。だからここへあなたを呼んだ。」 「おう、なんだ?」 長門は淡々と続ける。 「異空通達情報振動が観測された」 「なんだそれは。ハルヒか?」 「そう。地球でも宇宙でもない場所からの涼宮ハルヒの意思情報振動が宇宙で観測された。その振動はもうすぐ地球にも到達する」 「どういうことだ!?もっとわかりやすく説明してくれ!ハルヒが戻ってくるのか!?」 俺は今ほど長門の難しい言葉と俺の簡単な構造をした頭に腹が立ったことはないだろ う。長門の難しい言葉を理解できるのは古泉ぐらいだろうけどな。 長門は続ける。 「宇宙では涼宮ハルヒの意思情報しか観測されなかった。しかし彼女が暮らしていた地球でなら意思を具現化しやすい。宇宙よりより明確な異空通達情報振動が観測できる可能性がある。 私はそれを調査しに地球へと戻ってきた。でも、異空通達情報振動が観測されたということをあなたに伝える判断を下したのは私の意思」 「なんなんだよ、その異空なんたら情報振動ってのは」 「簡単に表すとするならば、メッセージ、と呼ばれるようなもの。しかし、宇宙で観測された異空通達情報振動は言語化することはできない。」 ・・・つまり、俺の簡単な構造をした頭で解釈してみると、ハルヒメッセージがどこか異世界から発信され、それがもうすぐ地球にも伝わる、ということだろう。 「わかった。じゃあ地球でなら、ハルヒのそのなんたら振動も俺が理解できるものになってる可能性がある、ということなんだな?」 「そう。そして、その異空通達情報振動は、あなたへ向けて発信された可能性が高いとされている」 涙が出そうになる。 ・・・俺をどこか遠いところから見ていてくれていたのか? そして、俺にどんなメッセージがあるというのだ。 ハルヒ。 「到達は、今日の夜頃になると予測されている。しかしどんな形であなたに伝わるのかは予測できていない。そしてそれがあなたに理解できるものなのかは保障できない」 「ああ、それでもいいさ。俺は待ってみる」 「そう」 「ああ。」 そして沈黙。 その沈黙を利用して、俺は気持ちを落ち着かせる。 心臓がうるさい、ええい黙れ。落ち着いて考えるんだ。俺。 いや、なれるか。俺はずっとずっとハルヒを待っていたんだ。なれるはずがない。 「・・・ありがとう、長門。」 「・・・いい。私は、しばらくは三年前利用していたマンションで調査をする。」 「わかった。・・・じゃあ、また会えるんだよな?・・・長門」 まっすぐに俺を見ていた長門の目が、ほんのわずかだが揺らいだような気がした 「・・・会える。私という個体は、あなたに会うことを楽しみとしていた。そして、今ここで再会することができて嬉しく思っている」 「ああ、俺もだよ長門。」 ああ、俺は今相当普通じゃないんだろうな。 長門の目が、ほんの少し潤んだような気さえした。 「じゃあ、今日は帰るよ。また明日、お前に会いに行くよ。話したいことがいっぱいあるし、お前がどうしていたのかも聴きたいからな。 ただ、今俺の頭は爆発寸前なほどやばいみたいだ。一人になって頭の中整理してみるよ」 「そう」 「ああ。本当にありがとうな、長門。」 長門の頭を撫でてやる。なんだか、今のこいつを見ていたら無償にそうしてやりたくなった。 「・・・・・・・・・じゃあ」 「ああ、また明日な。」 長門はなんだか機械的に背中を向ける。俺は長門の背中が見えなくなってから、乱暴に放置していた自転車を持ち上げた。 少しずつ日が暮れる。 俺は家で一人、窓の外を見ながらぼんやり思い出に浸っていた。 一つ一つ思い出していたんだ。SOS団で過ごした毎日を。 何度も繰り返し頭の中で再生した変わることのない映像も、なんだか今日は違ったものに思えた。 あんなことも、こんなこともあったよな。そうして一つ一つ思い出しているうちに、少しずつ視界がぼやけていく。 ・・・くそ、今日はなんだか涙腺が緩いみたいだな。 俺の頬を冷たい水が伝う。 最近はやっと涙を流す回数が減ってきたっていうのに。 お前が今、すごく近くに居るような気がしてならないんだよ、ハルヒ。 一粒、また一粒と目からこぼれていく。 俺はお前に会いたい。 そして、あの頃は素直になれず、気づくことのできなかった気持ちを、お前に伝えたいんだ。 俺は――――・・・ その時だった。 俺の頬に、暖かく懐かしい、そしてこの世で一番愛しく感じられるような手が添えられた。 ゆっくりと優しく俺の涙を拭う。 ―――俺の目の前に今、確かにハルヒが居る。 「・・・もう、泣かないの。バカキョン」 ハルヒは俺の涙を優しく拭い続け、そっと笑った。 「・・・ハルヒ・・・」 「キョン・・・会いたかったの・・・ずっと・・・ずっとキョンに・・・」 ハルヒは、あの頃と何も変わらない姿でそこに居た。しかし、俺の記憶に残っているどんなハルヒの笑顔よりも穏やかに笑っていた。 「ごめんね・・・突然居なくなったりして。・・・あたし、ずっとアンタを苦しめてたのね。・・・あたし、普通の人間なんかじゃなかったのにね。死んでから知ったわよ。 それなのに、あたしあっさり死んだりして、あんたを苦しめたりして・・・」 「ハルヒ・・・俺・・・」 言いたいことや言わなければならないことがたくさん俺の喉へと上ってきて、言葉にならない。上手く言語化できない、とはこのことだな。 ふっ、と小さく笑いを漏らすと、今度は1000万アンペアの輝きを持つ笑顔を見せた。 「いいのよキョン!わかってる。アンタのことなんて全部わかってるんだから!・・・本当よ?」 「ハルヒ・・・俺ずっと・・・ずっとハルヒに・・・」 だめだ。涙で詰まって声さえ出すのが難しくなってきた。 俺はしばらく自分を落ち着かせようと必死になっていた。そんな俺を、ハルヒはとても優しい目で待っていてくれた。 反則だろ。泣き止めるわけないじゃねぇか、こんな状況。 やっとのことで喋れる状態になり、今度は俺がハルヒの頬にそっと手を添える。 すると、今度はハルヒの大きな目から涙がこぼれた。 バカハルヒ。同じように涙を拭ってやる。 そして、大きく深呼吸をする。 「ハルヒ・・・ずっとお前に会いたかった・・・俺はずっと・・・きっと初めて会った日から・・・」 俺は、 ずっとハルヒに伝えたかった言葉を今――― 「好きだ」 そうはっきり告げて唇を重ねる。 あの時、閉鎖空間でキスした時よりも、きっと俺は、その、色々と上手くなっているはずだった。大人のキスのやり方だって知っている。 なのになんでだろうな・・・俺はあの時のように、不器用に唇をぶつけることしかできなかった。 でも、なんでもよかった。そんなことどうでもよかったんだ。 俺の腕の中に、今確かにハルヒが居る。 ずっと会いたかった、ずっと待ち続けた、誰よりも愛おしいハルヒが居るんだ。 今、ここに確かに・・・ 唇を離す。 開かれたハルヒの目から、また一筋涙がこぼれる。 俺が拭う前に、ハルヒは自分で目をごしごしとやると、また穏やかに笑ってくれた。 俺もそれに答えて笑ってみせる。 そしてハルヒは笑顔のまま喋りだした。 「あのね・・・キョン。あたし、今はここの世界にずっと居ることはできないの」 俺は笑顔を一瞬にして保てなくなった。 それでも、ハルヒは続ける。 「でもね、大丈夫。あたしたちはまた会えるの。絶対よ。あたしは今ね、アンタとまた一緒になるために向こうで頑張ってるのよ。 何をしてるのとか、向こうってどこなのかとか・・・それは、うん、そうね。また会えたときにゆっくりたっぷり話すからさ」 「俺はお前とずっと一緒に居たい。もう置いていかないでくれ」 俺の言葉に、一瞬ハルヒは声を詰まらせる。 「・・・ごめんね。でも・・・ほんとに、また会える日がくるから・・・。あたしのこと、信じて・・・キョン」 また涙がこみあげそうになる。俺は顔を歪ませて必死に堪える。 「大丈夫だよ。アンタは今日、ここであたしへの気持ちを忘れるから」 「忘れるわけないだろうが。何言ってるんだ」 「あたし、今この世界では一つしか力が使えないのよね・・・。その力で、アンタのあたしに対する恋愛感情を消すの」 俺はハルヒが言い切る前に力強く抱きしめた。もうまともに顔が見れねぇ。何を言ってやがるんだ、こいつは。 「だめだ。ばかなことはやめろ」 「大丈夫よ。あたしと過ごした記憶は消えたりしないわ。ただ、今までみたいに苦しませたりしないから・・・」 「お前が好きなんだ」 「キョン・・・」 ハルヒが俺から離れる。 「あたし・・・そろそろ、行かなくちゃ」 「・・・ハルヒ・・・ッ」 ハルヒの体が一瞬透ける。 堪えていた涙が、堤防を破壊して一気に流れ出す。 「キョン・・・あたしも・・・アンタのことが好き・・・。それはずっと変わらないから。ずっと・・・永遠に」 ハルヒがどんどん薄れていく。耐え切れず俺は、ハルヒの両手をぎゅっと握り締める。ハルヒはそれに答え、俺と指を絡ませた。 「ハルヒ!」 「キョン、大丈夫よ!アンタは幸せになれる。今まで辛い思いしてた分、ちゃんと笑って暮らせる未来があるんだから。 そして、あたしたちはまた会えるの。約束するわ。あたしのこと・・・信じて」 ハルヒの笑顔が、消えていく――― 「さよなら、またね、キョン。・・・ありがとう」 ―――・・・ ハルヒが死んで5年。 そして、ハルヒと再会してから2年が経った。 俺は21歳を迎える。 そして、今長門と一緒に居る。 長門と、そして長門と共にある新しい命と一緒に、だ。 出産はもう間近だ。その時に備えて、今俺達は二人病室に居る。 あれから、ハルヒと再会してから、長門は普通の人間になることができたという。 そして俺たちは毎日のように会い、そして今、こうして二人で暮らしている。結婚式は2ヶ月前にしたばかりだ。 結婚式には、なんと古泉や朝比奈さんまで来てくれた。古泉も朝比奈さんも多くを語ってはくれないが、今は月に一度程度、4人で顔を合わせている。 きっと二人もハルヒに会ったのだろう。 俺は幸せだった。 長門が居て、古泉や朝比奈さんも居て。 ハルヒが言ったちゃんと笑って暮らせる未来が、今ここにあった。 ただ、ハルヒが居ない。それが足りないだけだった。 「・・・今日は、七夕だな」 今まで沈黙を続けていた病室で、俺はつぶやいた。 長門はふいに、ゆっくりと顔をあげる。そしてそのままゆっくりとカーテンを指差した。 「・・・空」 「・・・?・・・なんだ、天の川でも出てるのか?今日は晴天だったが・・・」 こんな所じゃ天の川なんて拝める程の星は見えないぞ、そう言い掛けながら俺はカーテンを開けた。 そこには、無数の星。 天の川ではない。その星達は、綺麗な幾何学模様を作り上げていた。 「・・・これは・・・」 呆気に取られる俺に、長門はぽつり、と言った。 「『私は、そこに居る』」 その言葉の意味を、俺は一瞬で理解した。 実はな。 俺はやっぱり最低な男みたいだ。 あれから・・・ハルヒと再会した時から、俺の気持ちは変わったりしていない。 今でも俺はハルヒのことが好きだ。 いや、もちろん長門のことだって同じくらい愛しているさ。 あの時、ハルヒは俺からハルヒへの想いを消さなかったってことだ。 何でかって? それは、長門が人間になることができたことを思えば、答えは簡単に出る。 俺は今最高に幸せだ。 ハルヒが言ったように、俺はちゃんと幸せになれたんだ。 ハルヒが嘘をついたり、約束を破ったりすることなんて一度も無い。 あいつは全て有言実行する奴だからな。 そう、 だから今、 俺はあいつが言ったように、ハルヒと再会することができている。 もう7歳になる俺の娘。 俺と長門の子供だ。 黄色いカチューシャをつけて、今、テレビの前に座っている。 うさんくさい番組だ。あんなのをUFOなどと呼んで誰が信じるんだ。下手したら飛行機を画質の荒いビデオカメラで撮影したものの方が世間には受け入れられると思うぞ。 ばかばかしくてため息が出そうになう番組だが、俺はチャンネルを変えたりしない。 そして前言を撤回する。信じる奴だって居るんだよな。今ここで、熱心にテレビに食いついている俺の娘がその一人だ。 最初から最後まで「フィクションです」と言わんばかりのインチキ映像を見せられ、ようやく番組が終わったところで、ずっとテレビに向いていた顔が俺に向いた。 大きな目をぱちぱちと瞬きさせて、100万ワットの笑顔で俺に言うんだ。 「ねぇキョン、宇宙人って居ると思う?」 俺の答えは決まっている。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1911.html
いつものように朝比奈さんの炒れたお茶を飲みつつ、古泉とオセロを楽しむ 今じゃアナログなゲームかもしれないが、これはこれで中々おもしろいもので… と言っても、相手は古泉 無駄にボードゲームを持ってくる割りにはほとんど手ごたえはなく…というか弱い まぁ家に帰って勉学に励むわけでもないし、こんな風にまったりとすごすのもいいものだと思うようになってきた というより、涼宮ハルヒの存在で、ゆったりした時間がどれだけ希少に感じられることか… しかし、こういう時間は一瞬にして砕かれる こいつのせいで… バンッ!!! 毎度の事だが、物凄い音とともにドアが開かれる もしドアの近くに居たりなんかしたら、よくて骨折だぞ 「ドアくらいゆっくり開けろよ」 「いつものことでしょ」 さらりと言い放つと、団長の机に飛び乗った 「なんだ、演説でもするのか?」 「ちょっと違うわ。まぁ聞きなさい」 とハルヒは言い、スカートの後ろにさしていた雑誌のような物を取り出した その雑誌はこの前俺達、鶴屋さん他etc…で作成した会誌だった 出来栄えはよく、評判も結構良いとのことだった ハルヒは会誌を広げ、 「今回の会誌は大成功!もういろんなとこから太鼓判押されまくりよ!この調子だったら月一くらいで販売するのも良さそうね」 とまたもやあの不敵な笑みを浮かべた が、俺は即反対する 「そんなもん売ったりしてたら生徒会にまたなんか言われるぞ」 と言うが、 「んじゃ売らなかったらいいの?無料配布なら生徒会の連中も文句いわないでしょ?」 と一向に自分の思考を曲げようとしない よくて有料から無料になったくらい… 作るのは俺達だぞ それに配るたびにいつかのバニー姿みたいなことしたら、それこそ生徒会だけでなくいろんなところから目をつけられる 下手すりゃ謹慎だってありうるぞ 「まぁ作るのはいいだろうが、バニー姿とかで配るのは止めろよ」 と言うと、 「あんた、鋭いわね。なんで私の考え分かるのよ。超能力者?」 いや、少なくとも俺は普通の人間だ というか超能力者なら俺の目の前にいるぞ とか言ってやりたかったが、そんなこと言ってもどうせ信用されないだろ ハルヒにとって古泉は『謎の転校生』だったくらいのもんだ 今となっちゃ転校生なんて全く関係なく、ただの男子生徒 趣味は赤い玉になって空を飛ぶことか? 「とにかく止めとけ。するんならもっとマシな衣装にしとけよ」 と言うと 「団長に指図しないの!…でも、新しいコスチュームもいいかもねぇ…」 と言い、椅子に座り考え始めた 俺はそのまま古泉とオセロを楽しみ、今日の活動は終わった 次の日、いつもと同じ登校だったが、今日は金曜日だ 明日は休みと思うだけで、どれだけ嬉しいものか 午後、いつもの様に部室に行くと、あのハルヒが満面の笑みを浮かべていた そして、俺が入るやいなや 「キョン!あんた小説書くのよ!」 と、やたらでかい声を張り上げた 「あー。パスだパス。お前が全部作っていいぞ」 と親切にも譲ってやると 「あんたは絶対書かないとダメ!今回は私も小説を書くわよ!」 と良い、パソコンで何かをしている 正直、前回の会誌作りは本当に疲れた あんまり良い話でもない吉村の話をほりあげられたんだからな… それに、もう恋愛小説なんて無理だ 「何よ、恋愛小説を書いてなんて頼んでないわよ。今回は…」 と言い、ハルヒは黙った あらかた俺に書かせたいジャンルを決めているようだが… ハルヒは自分の髪をぐしぐしと掻き 「キョン!あんたなんか書きたいジャンルある?」 と聞いてきた いや、別に無理に書かなくても… というか本当に書きたくないんだが… 「それじゃあ駄目でしょ。なんか書きたいジャンル、考えとくのよ」 「じゃあハルヒは決まってるのか?」 と聞くと、口を尖らせて 「決まってないから考えてるのよ!」 俺はふと 「だったらSFでも書けばいいんじゃないか?前回の会誌はSFは無かったし」 「そうねぇ…SFは有希に書いてもらおうと思ってたけど、私も書いてみよっかな」 と言い、カチカチとまたパソコンをいじりだした お前がSFなんて書いたらどんな作品が出来るかも分からん ハルヒの想像力は半端じゃなさそうだからな 俺は朝比奈さんが炒れてくれたお茶をすすり、古泉の用意したオセロを始めた 「あなたの書く恋愛小説は少し楽しみだったのですが…」 と言い、おきまりの笑顔で 残念 のジェスチャーをした 「一応聞いとくが、それは嫌味か?」 「まさか、本当に興味があるんですよ」 全く、こいつの考えは全然分からん… それになんでも笑って誤魔化そうとするな 少なくとも男の俺には効かんぞ そのままオセロをしながら、部室のお茶を浪費していると バンッ!!! と、物凄い音が響いた 俺と朝比奈さんは軽くびくッと振るえ、団長の机の方を見た ハルヒが不敵な笑みを震わせている 「そうよ!私SFを書けばいいのよ!」 と大声をあげ、うん、うんと一人頷いていた 流石に訳の分からない行動にも程があるぞ 「どうしたんだ?そんなに良い案が浮かんだか?」 「浮くもなにも、浮きまくりよ!今私の中の創作意欲がすごいことになってんのよ!」 そうか、そうか 「そう!ホント!これはいいわ!かなり書きやすいわ!早速書かないと…」 「どんな案なんだよ」 と聞くと、 「ほら、私たちって宇宙人とか未来人とか超能力者とか探してるじゃない?」 それはお前だけだろ というかもう宇宙人も未来人も超能力者も揃ってるぞ 「だからね!小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!」 まぁハルヒの願いらしいからな… 小説の中で収まるんならそれでいいだろ 実際にそこのドアから足が二十本もある緑色のクラゲみたいな生き物なんぞ出てきた日には… SOS団壊滅の危機だな それとも長門が倒してくれるか? 延々と一人創作意欲と欲望をごちゃまぜにして、演説をしているハルヒを放って、俺はオセロの続きを始めた が、古泉が何故かハルヒの方を見つめ、眉間にしわを寄せている こんな顔をする小古泉は珍しい 写真でも撮るか やっと長い演説を終えると 「んじゃ、資料を調達して土日中にでも書いてくるわ!月曜には見せてあげるから楽しみにしててね!」 と言い、ハルヒはカバンを持ちドアまで走って行こうとする すると、 「涼宮さん!」 と古泉が大声を上げた これには朝比奈さんと俺と長門、そしてハルヒも思わずびくッと震えた なんせ古泉が声を張り上げるようなところなんて一度も見たことがなかったからな しかし、古泉も冗談とは思えないほど顔に力が入っている おいおい、お前こんな顔になるのかよ 「な、なに?」 ハルヒは足踏みをしながら古泉の方に向いた 「涼宮さん、やっぱりSFは長門さんに書いてもらった方がいいんじゃないですか?よろしかったら僕でもいいです」 かなり必死に言っている いつものクールに気取った感じは吹き飛び、どう見ても別に人格が入ったように見える 「でも、もういい案浮かんじゃったからね!早くしないと図書館閉まっちゃうし…」 と言いつつ、ドアから飛び出して行った それを追うように、古泉がドアから出て「涼宮さん!」と叫んでいたが、ハルヒはそのまま行ってしまったようだ それから十分ほどして古泉が戻って来た さっきほど動きは荒々しくはないが、表情がどことなく落ち着いていない 「大変です。これは極めてよくない状況…かもしれません」 その言葉を聞くと同時に長門が分厚い本とパタンと閉じた 長門も古泉もただならぬ雰囲気を出している 「どうしたんだ?何かあったのか?」 「何かあったなんてもんじゃありません!」 と思いっきり机を叩いた 俺は今日あまりにもいつもと違いすぎる古泉に驚いた 古泉は俺の表情を読み取ったのか 「す、すいません…つい…」 古泉がこれだけ動揺しているとは… どんな事件なんだ… 「一体何があったんだ?詳しく聞かせてくれないか?」 と聞くと、俺の前に座った 「今から話すことは正しいとは言いきれません…ですが、確実にそうなりつつあるのです。ですから心して聞いてください」 古泉はまずそう言い、話し始めた 「今、涼宮さんのいる近辺で小さな閉鎖空間が大量に発生してきています。しかし、 これは涼宮さんのストレスなどの影響ではありません」 「それじゃあ、ハルヒとは別の人間か?」 「いえ、今発生している閉鎖空間は間違いなく、涼宮さんによるものです。しかし、その中には私たちが入ることはできません」 入れない? 「つまりですね…閉鎖空間は存在するのですが、なんというか…」 そこで古泉は押し黙ってしまった すると突然長門がこちらを向き喋りだした 「その閉鎖空間は今までのものとは全く違うもの」 全く違うもの? 「そう。今の世界とは別の世界を、涼宮ハルヒは創造しようとしている」 よく分からん… それを聞いた瞬間、古泉がハッと気づいたように俺を見た 「その例えが一番簡単ですね」 何がだよ、ちゃんと教えてくれ 「今の長門さんの話を簡単にまとめると、今、涼宮さんは小説のため『宇宙人に会う自分たち』を創造しています これによって閉鎖空間が発生したものと思われます」 つまり、どういうことだ? 「ですから、今僕たちの居る世界とは違う世界…涼宮さんの創造する世界が出来上がりつつあるんです…」 ハルヒの創造した世界? …ちょっと待て…ハルヒはたしか 『小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!』と言った それが今ハルヒの創っている世界? だとしたらその世界では俺たちが宇宙人や未来人や超能力者…いや、もっと違うものに出会わなければならない事になる つまり、ハルヒの創造によっては俺たちは未知の生物とご対面してしまうかもしれない? ってことか? 「だいたい合ってますね。でもよくないのはその世界が出来てしまってからです」 「なんでだ?創造の世界と行っても他に何か恐ろしいことでもあるのか?」 古泉は俺の発言に呆れたようにため息をついた 「あなたが一番分かっているはずです。まずですね、その涼宮さんの創造した世界が完成してしまうと、現実の世界… つまり僕たちのいる世界に上書きされてしまう可能性があるんです。そうなってしまえば…」 古泉は額に手を当てつつ、言った 「僕たちは未知の生物と強制的に遭遇してしまいます…違いますか?長門さん」 と、いきなり長門に質問を投げ掛けた 「ちがわない」 「ということは…僕たち…涼宮さんが未知の生物に会ってしまえば…自分の力に気づいてしまうかもしれません…」 ハルヒが自分の力に気づく… それはどれだけ危険なことか…俺たちSOS団と呼ばれる団に所属するものなら分かる あの以上なまでの想像力のせいで、ありえない季節に桜が咲き、猫が喋りだし、未来人が目から光線を出してしまう… そんなことが強く願うだけで実現してしまう人間が…自分の力に気づいたら よく進んでも悪く進んでも、今の平凡な日常はいとも簡単に崩れてしまうだろう… 朝比奈さんのいれるお茶を飲みながら、つまらないボードゲームを楽しむことも… 5人で街を探索することも… まだ出来て1年も経っていないSOS団が潰れてしまうかもしれない… それも団長の手によってだ… 俺はまだゆったりと過ごすこの世界で生きていたい 俺は拳を握り締め 「古泉…何か方法はないのか…」 古泉は押し黙っている 「古泉!!」 と声を張り上げると 「わからないんです!今どうすればいいのか!何が世界を救うのか…」 と最後の方は力なく呟いていた… 俺達を見ていた朝比奈さんが心配そうに震えている こんな時は冗談の一つでも言うのがいいのか…いや、俺は今そんなこと言える状態じゃない… でもどうしたら… 「方法はある」 と、突然長門が言った 俺はすぐに 「何か方法があるのか?」 長門は頷く 「何をするんだ?何かしてくれるのか?」 と聞くと首を横に振り 「私たち情報統合思念体は涼宮ハルヒの行動の観測が主である。故に今の涼宮ハルヒの行動を私たちが制止させることは出来ない。」 「それじゃあ…」 「でも、今から言う方法はあなたにしか出来ない。もちろん必ず成功するとも限らない。それでも行動することを推奨する」 俺にしか出来ないこと? 「そう。あなたにしか出来ない」 俺にしか出来ないと言っても… 俺は宇宙人でも未来人でも、ましてや超能力者でも何でもない ただの人間だ 「あなたに特別な能力は備わっていない。だが、あなたは涼宮ハルヒに一番信頼されている存在。 今の彼女の変化もあなたのせいでもある」 俺のせい? 「あなたがSFというジャンルで書くことを彼女に推奨した。それによって涼宮ハルヒは今のように世界を創造している」 訳が分からんぞ 「つまりですね…あなたが『SFでも書けばいいんじゃないか』と言わなければ、現状のようにならなかったのかもしれません」 そうか…でも、なんで俺は攻められてるんだ? 「別に攻めている訳ではありません。事実なんです。あなたがもしあの時…」 「わかった、わかった!それで?俺はどうすればいいんだ?」 多分、俺の顔は不機嫌丸出しだったんだろうな… 遊園地にでも居れば、周りの人が即気分を害すような感じの表情なんだろうな… 「あなたが涼宮ハルヒに創造を止めさせる方法は、彼女に今の世界を必要とさせることが必要」 つまり、どういうことをすればいいんだ? 「涼宮ハルヒはあなたを信頼し、あなたに対し不完全ながら恋愛感情を抱いている。そしてあなたが出来る一番確実な方法が、恋愛の成熟」 と、いう…ことは? 「そうか!そうです!その方法がありましたか!」 と喚き、古泉は拳を震わせている 今日はよく叫ぶな 古泉 「訳が分からん…ちゃんと説明してくれよ」 古泉は笑顔で 「つまりですね!あなたが涼宮さんと結ばれればいいんですよ!恋愛の成熟です。そうです。それで世界が救われるかもしれません」 「えっと…俺とハルヒが付き合うようになればいいってことか?」 「そうです!涼宮さんが前々からあなたに好意的な態度や行動をとっているのはご存知でしょう?」 「…どういうことだ?」 俺の発言を聞いた途端、古泉の笑顔が消え、苦笑いをしている 後ろの長門も、何かいいたげな表情だ そして朝比奈さんを見ると、明らかに呆れ顔になっている…というより少し怒っているようだが… 「ちょっと待ってください…あなた、僕の言った意味が分かりますか?」 いや、何のことを言って… 「キョンくん…もしかしてふざけてるんですか?」 と朝比奈さんが少しすごんでいるような感じで話しかけてきた 「いや、本当に何のことだか…」 朝比奈さんはその言葉を聞いて、そっぽをむいてしまった やや、おおげさなため息が聞こえ 「いいですか?涼宮さんはあなたのことを気にしています。長門さんによれば不完全ながら恋愛感情をあなた抱いている… つまり、あなたの一押しでうまくいくことだってありえるかもしれないんです」 そんなことをいきなり言われてもな… 「でも、なんで付き合わなくちゃいけないんだ?」 またもため息… そんなに俺の発言が気に食わないのか? 「ですから、『この世界が必要だ』と涼宮さんが心から願ってくれればいいんです。あなたという大切な存在が必要だと思えば、 無意識に創造を止めるかもしれません…」 「そう…か?」 「ですが、必ず成功するとは言いきれませんよ。何せ人間関係というものは私達には想定できないものです。ましてやあの涼宮さん。 はっきり言うと悪いんですが、かなり変わった思考ですよね?」 それは…たしかだな… 学校全体でアンケートをとったら確実に『変わった人』との結果が出るだろう 「ですから、何をどう考えているかなんて分からないんです…ですから…」 「その場その場で対処の仕方がない…と?」 「そうです。ですから確実に成功するなんてことは言い切れません。ですが、あなたの気持ち次第で決まることです」 俺の気持ち次第で…か… 世界って本当に安くなったな… 俺の気持ちくらいで世界が救えるなんて… その後俺たちはどうするかを考えた 朝比奈さんに何か出来そうなことを聞いてみたが、過去への干渉はできないらしい。 というか未来の野郎どもは朝比奈さんの要求を全く受け付けないらしい つまり、俺のSF発言を消すことすら出来ない… まぁ出来るのなら、未来の俺が止めに来ていたはずだが… 結局、他に具体的方法がなく、俺とハルヒを結ばせる計画で世界を救うことになった もう、こんなことじゃ驚かなくなってきた自分を褒めてやりたい… だが、重大な問題がある ハルヒが小説を見せると言ったのは月曜 つまり、あと二日のうちに、ハルヒの創造を止めなければ、俺たちの世界が上書きされてしまうことになる 俺はとにかく今日は休んで、明日、明後日をどう過ごすかを考えていた いや、過ごすなんてもんじゃない どうやってハルヒと付き合えばいいのかを考えていた 次の日、見事なまでの晴れ このままいけば、世界が明後日には変わってしまうなどと、どのくらいの人が知っているのだろうか… 俺はまず昨日まとめた行動をとる 単純にデートだ まずは、電話で約束を取り付けないといけない 俺は携帯からハルヒの番号を選択した 3回のコール音の後、ハルヒが出た 「どうしたの?あんたがこんな早くに起きてるなんて珍しいわね」 俺は昨日考えておいた話をそのまま喋る こういうのはあんまり好きじゃないんだが… 「実はだな、妹と親が映画に行く予定だったんだが…熱がでてな」 「どうしたの?もしかしてデートのお誘い?」 すごいなハルヒ お前、本当は超能力者じゃないのか? 「まぁそんなところだ。どうだ一緒に行かないか?」 と言うと、数秒あいてから 「ほ、本当に?それじゃいくわ!何時に何処集合?」 向こう側のハルヒはかなりご機嫌のようだ というかハルヒってこんなに素直だったか? もっとこう…俺に対しては嫌味っぽいというか… これがみんなの言っていた俺に対しての好意なんだろうか… ここまで明確なら、俺でも分かるんだけどなぁ… まだ自覚が無さ過ぎる… 「そうだなぁ…じゃあいつもの駅前に10時くらいでいいか?」 「10時くらいじゃなくて10時よ!遅刻したら死刑じゃ済まないわよ!」 そう言って会話は終わった 俺はため息を吐き出しつつ、受話器を置いた この会話は嘘が多いい… まず、妹は熱なんてでていない 今も雄の三毛猫とじゃれている それに映画のチケットも古泉が用意してくれた しかも現金で2万も渡してくれるとは… 古泉いわく「男性は女性をエスコートして当然ですからね。お金が足りないなんてもってのほかです」 また、足りなくなったらすぐ言って欲しいとのことだった というかお前、この現金の入手経路とかって大丈夫なんだろうな… それにな古泉、もしかしたら俺の私欲で使い切ってしまうかもしれんぞ 今回の作戦は朝比奈さんも長門も古泉も来ないらしい 古泉か長門くらいは見張りに来ると思ってたが… なんでも相手が人間…ハルヒだからな 俺が困ってたって対処なんかできやしない… というか手助けはしない方がいいらしい… あくまで、自然な結びつきがベストだとのことだ つまり、今回は俺の意思を尊重するらしい… 下手をすれば世界は…というか俺のせいで『世界が変わっちゃいました』なんて絶対に嫌だからな そんなことになったら古泉がぐちぐちと文句をたらしてくるだろうし、謎の生物に遭遇して遊ばなくちゃいけなくなる 俺はそんなこと断固拒否だ 拒否出来んのなら是非、誰かに譲ってあげたいね 俺は適当に朝食を済ませ、時計を見た 今丁度9時… ゆっくり着替えて家を出ても十分間に合う時間だ 俺は身支度を済ませ、昨日古泉が用意してくれたチケット2枚を持って家を出ようとした 「キョンくん、もう起きてるの~?」 パジャマ姿の妹が出てきた そうだよ 俺は今から出かけるんだ それもデートだ いつかのみたいに小学生じゃないから まぁデートに行くなんて行ったら、後ろから着けて来そうだからな ここは適当に誤魔化さないとな 「ちょっと買い物だ。欲しい本があるからな」 と言うと 「それじゃあおみやげ買ってきてねぇ~」 とシャミセンで腹話術まがいをやってみせた 俺は適当に「はいはい」と流し、自転車に乗った 駅につくと、我らがSOS団 団長の涼宮ハルヒが仁王立ちでこっちを睨んでいた 俺が自転車を置いて、ゆっくり歩いて行くと 「遅いッ!なんでレディーを待たせんのよ!」 とハルヒが詰め寄ってきた 「いや…まぁこんなに早く来るとは思ってなかったんでな」 と言いつつ、笑って誤魔化したが 「私より遅かったんだから罰金よ!罰金!」 結局罰金かよ… その後、映画の始まる時間まで2時間近くあったため、いつものファミレスに入った もちろん俺のおごりらしい… まぁ金は大丈夫なんだがな ハルヒはパフェとカフェオレを頼み、俺はチーズケーキとコーヒーを頼んだ 「あんた、コーヒーなんか飲めたの?」 いや、コーヒーくらいは飲めるぞ 「そう、まぁ高校生にもなって苦いなんて言ってたら味覚がおかしいわよねぇ」 あー、俺はまだブラックなんぞ苦くて飲めないんだが… デザート類はすぐ運ばれてくる 注文して5分も経っていないのに、ドリンクとデザートが揃った 「うん、まぁまぁじゃないこのパフェ」 ハルヒは感想を述べている 安いパフェではあるが結構なボリュームだ 「結構な量だが、食べきれるのか?」 「大丈夫よ。それよりあんたのちょっと貰うわね」 と言い、俺のチーズケーキをかなりカットして口に運んでいった おいおい、俺まだ食ってないんだぞ というかちょっとじゃないだろ と細かく突っ込もうとしたが、なんとなくそんな気にならなかった なんでだろう…今日のハルヒはいつもよりご機嫌に見える いや、いつも元気はいいんだが… にこにこ顔でチーズケーキを頬張っている なんだか、見ているこっちも微笑ましくなってきた 「何?人の顔見て笑うなんて変な趣味ね」 どうやら顔が少し緩んでいたようだ 「あー。お前の食べっぷりがあまりにいいんでな。少し関心してたところだ」 「そんなとろこに関心しなくていいのよ」 と言い自分のパフェを楽しみだした 結局2時間もだらだらと会話を楽しみ、ファミレスを出た もちろん俺のおごりだ しかしそのくらいじゃ俺の財布はびくともせん 今の財布は豚の如く肥えてるからな 俺たちは今日のメインである映画館にやって来た まだ上映まで15分ほどあるが、丁度いい時間だろ 俺は二人分のチケットを受付に私入場した 適当にポップコーンでも買おうかと思ったが、ハルヒはいらないらしい 俺はハルヒの分と自分のコーラを買い、席についた 位置は丁度真ん中の真ん中 つまり映画を観る位置じゃ首も疲れなく、観れる位置だ 一度だけ一番前で観た自分なら分かる あの2時間たった後の耐え難い肩と首のこりは1500円も払ってまでして食らいたいものではない 「映画なんて久しぶりよ。中学生以来かな?」 なんだ SF映画ばっか観てると思ってたのに 「何言ってんの?映画なんてただの作り物でしょ?なんのリアリティーもない映画なんて観る時間が勿体無いくらいよ」 とスパッと言い放った だったらなんで俺の誘いにのったんだ 「だって…映画の券が勿体無いでしょ?キョンの親だって妹だって、無駄に捨てちゃうくらいなら使ってもらった方が嬉しいに 決まってるじゃない」 まぁそれはもっともだな と言ってもこれは親が買ったわけでも妹が買ったわけでもない 超能力者古泉がどこからか引っ張り出してきたチケットだ ちなみに入手経路は本当に分からん 偽造チケットなんかじゃないだろうな… ブーッという音はもう鳴らず、いきなり映画のCMが始まった もう上映の合図の音が鳴る映画館というのはないのだろうか… 延々続きそうな映画紹介が終わり、本編が始まった 内容はものすごく単純 簡単にまとめると… 強い男がいて、その近くにヒロイン的女性がいる んで、二人がSFチックな紛いごとに巻き込まれて… 女性大ピンチ!男が必死になって救出! 最後は結局ハッピーエンド… まるでこの手の映画を探したら何本出てくるのやら… 内容はまるっきり… というかアクション映画の王道過ぎて、どこまで真似物なのか分からん 最近のCGとかの技術はすごいもんだ…という感想くらいしか思いつかず、頭の中では『B級の上』程度に収まった ハルヒは映画が終わるなり 「あんた…こんな映画…妹が観たいって言ってたの?」 いや、妹は… 「あー。親父が観たいらしくてな。それでついでに妹も…ってことで2枚買ったらしい」 「ふ~ん…でも何かあれね。どっかで観た感じ。もうアクション映画なんて見飽きるからね。 でも最近の技術ってすごいわね。爆発とかかなりリアルだったじゃない」 まぁそれなりの評価らしい 少し安心だ 「でも…評価するなら…『B級の上』くらいじゃない?」 と俺の目の前で人差し指を立てて、言った 全くもってその通り というか俺の考えを読むな 本当に超能力者かお前… 無事映画も終わり、時間は午後2時 丁度腹も空いていたので、どこかによることになった と言っても中々良い場所がない ハルヒも 「もうどこでもいいわ。私お腹空いてきちゃったし」 と言うので、近くのファミレスに入った いつも集まっているファミレスとは違うファミレスだ まぁ大して変わらないのだが、ここは大きなドリンクバーがあって、最初にドリンクを頼めば飲み放題らしい 「飲み放題っていいわね!駅前のファミレスもここと同じことすればもっと売り上げが上がるのに」 いや、そんなことしたらあそこが俺たちの部室に変わってしまう 毎日毎日5人が来て3,4時間も…だらだらと飲み物を消費されたんじゃあ、店側の利益も下がったりだろう ハルヒと俺は和食セットとドリンクを頼んだが 「私と同じの頼まないの。あんたは違うのにしなさい」 と言われ、ドリアセットに変えた 飯くらい好きな物食わせろよ… 俺がドリンクバーに飲み物を取りに行こうとすると 「私お茶でいいわ」 お前俺に行かせる気かよ 「当たり前でしょ。団長だもん」 今は部活中じゃないぞ お前の団長命令は無効化だ と言わず、俺はお茶の入ったカップを2つ持ってきた 「ありがと」 と言ってハルヒはお茶をごくごくと飲む 数分経ってから、和食セットとドリアセットが運ばれてきた ここは注文してからも結構早く運ばれてくるな 案外ここの方が駅前のファミレスよりいいかもしれん ドリンクも飲み放題だし さっそくドリアを食べようとすると 「私もちょっと食べたいわ」 と言い、俺のスプーンを取り上げ、ドリアを一口食べた だから、勝手に食うなって…俺まだ一口も食べてないんだぞ 「熱ッ!」 と言い、はふはふと口を動かしつつ、スプーンを返してきた 「うん、結構おいしいじゃない」 感想を述べ、自分の料理に手をつけ始めた まったく…と言い、俺はドリアを食べ始めた …たしかに熱い…少し冷まさないと火傷するな… 一口だけ食べてスプーンを置くと、ハルヒがこちらを見ている どことなく頬のあたりがほんのりと赤い 「どうした?」 「い、いや…なんでも…それより食べないの?」 少し動揺気味のハルヒ なんだ 俺何かしたのか? 「いや、熱くてな。もう少し冷めてから食べる」 「そ、そう」 ハルヒはそう言うと、顔を下に向け和食セットを食べていった 結局俺とハルヒは食事が終わるまで全く会話がなく、俺が話しかけても 「そう…」「うん…」 程度に、あいづちくらいしかうってくれなかった なんだよこの空気 俺何かしたのか? 食事を済ませ、ファミレスから出る まだ、うつむいてるっぽいハルヒに 「どうした?大丈夫か?」 と話しかけると 「何が?別に何もないわよ。それよりどっかに行きましょ!」 と言い、ズンズンと歩いていく なんだあれは…訳が分からん その後、近くにあったゲームセンターにより、適当に暇を潰した 格闘ゲームやレースゲームでハルヒから挑戦を受けたが、見事に惨敗 こいつ、勉強だけじゃなくなんでも出来るのか… 俺にも何か一つくらい才能とやらを分けてもらいたいね 一通りゲームをすると、ハルヒがUFOキャッチャーがやりたいと言いだした さっそくハルヒがコインを投入し、挑戦してみるが…あっけなく失敗 その後5回も挑戦するものの全て失敗 というか一度も人形をつかめていない どうもさっきからやたら大きい人形を狙っているよだ だが普通に考えてあんな大きい獲物は無理だ だが6回目もハルヒはそれを狙っていた 見るにみかねた俺が「一回やらせてくれ」といいコインを投入 ハルヒが 「そこのおっきいのよ!それよそれ!絶対それよ!」 耳元でがなり声を上げるな 俺はハルヒの指示通りでかい熊の人形を狙う が、これは確実に無理だ アームだってさっきから見てたが弱すぎるだろ が、アームが上に上がってくると、うまく熊の手を絡めとっていた こんだけでかい人形がこうもうまく引っ掛かるとは思っていなかったのでびっくりしていたが見後ににキャッチ しかもそのまま落ちず難なく手に入った 「やるじゃないキョン!さすがね!何か新しい階級を与えないといけないわね!」 と大喜びしながら熊を抱えるハルヒ ああ、是非とも新しい階級が欲しいね もう雑用係はごめんだからな 俺の取った熊に大満足で笑みを浮かべるハルヒ なぜだろう…いつもは見慣れないからか、ハルヒの笑顔を見るとドキッとしてしまう 今日の俺は変だな… やはり昨日の古泉や長門の発言のせいだろう… ハルヒは熊の人形を両手で抱えながら俺の隣を歩いている 時間は5時… もうすることもなくなったし適当に散歩だ 俺たちは何気なくあの通りに来ていた 初めて朝比奈さんが自分の正体を明かしたあの場所だ 俺は近くのベンチに座り、昨日のまとめた考えを浮かべていった デートが終わった後、俺はハルヒに告白をする これだけだった… でも不安だった… 俺はノリで人を好きになんてなる方じゃない むしろ好きになったとしても告白なんてな… そんな度胸は持ち合わせてはいない それに俺の中では、ハルヒへの想いがまだ決まっていなかった だが、ここで俺がハルヒと付き合わなければ… 世界は必ずと言っていい 変わってしまうのだ 平穏な生活が砕かれ、未知の世界へと変貌を遂げてしまう… 俺はそのことを肝に命じ、どう告白をしようかと考えていた すると突然 「何か来たわよ…」 とハルヒが言う 俺が顔を上げると、にたにたと笑う谷口と国木田がこっちに歩いて来ていた やばい、やばい… こんな状況を見られたら…いやそれは別にかまわん… いや…そうじゃなく…あいつらが来たら告白なんて不可能だ…絶対無理だ… 頼むからどっかに消えてくれ…と願ったが、その願いも虚しく二人が目の前まで来た 「キョン…お前コイツと付き合ってたのか…?」 唐突に谷口が言う お前、あからさまに楽しんでるな 内心かなりムッとした まぁ今から告白するところだったんだが だいたいなんでこっちに来るんだよ 「あんたには関係ないでしょ。どっか行ってよ」 いきなりハルヒが谷口に向かって言った 少し怒っているようだが… 「おいおい、涼宮がマジになるってことは…」 谷口は手を口の前に持っていき不敵な笑みを浮かべている お前は中学生か あからさまに俺とハルヒが一緒に居ることを楽しんでいる その笑みは微笑ましいというより、変わったものを見て楽しんでいるような感じだ …お前はそんなにハルヒが嫌いなのか? 俺は思わず 「お前は関係ないだろ」 と言うと 「おやおや、キョンまで怒るのか?…あ、それとも今から告白するところだったか?」 こいつ…なんでこんな時に鋭いんだよ… いっつも馬鹿みたいな考えしか持たんくせに… 「まぁまぁ、そうだったら僕達はお邪魔みたいだし、そろそろ帰ろうよ」 と国木田が谷口を静止させよとする 「キョン、言っとくが涼宮は変わり者だぞ。前も言っただろ?」 谷口がそう言った瞬間、俺の中で何かが弾けた なんでお前が変わり者なんていうんだ? 変わり者? ああ、そうだ ハルヒは確かに変わった女子高生だろう 自己紹介で『宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい』と言うくらいの筋金入りの変人だ そう変わり者…だから? だからどうした? そんな発想があるだけいいじゃないか 少なくとも谷口 お前はそんな夢のある考えを持っているのか? いつもいつもハルヒの行動にケチをつける割りにはお前は何かしているのか? そりゃ周りから見ればただの奇行かもしれん… でもな、お前のようにへらへらしてるだけの女好きにそんなこと言う資格なんてないだろ? それにな、俺はハルヒと一緒にいる今が一番楽しいんだよ! それを何もしていないお前に言われるのは腹が立つんだよ なんで自分のやりたいことをやってる人を馬鹿にするようなことを言うんだ 何もしない人間が何かをしている人に対して愚痴をたれるのはいかなる場合であってもいいはずがない それを本人の前で言うなんてもってのほかだ お前のようなやつがハルヒのことを悪く言うのは許せんぞ 俺がそう考えているうちに、勝手に体が動いていた 今、考えていたことが声にでていたのかは分からない… だが、今俺の目の前には顔をゆがめている谷口の顔があった 俺は今谷口の首元を掴み、目の前に引き寄せている そして右手が拳を作り、今にも殴りかかろうとしていた 「ちょ、キョン落ち着いて」 国木田が静止させようと俺の左腕を掴んでいる 俺は…谷口を殴ろうとしていた? 「ッ……」 谷口が俺の手を振り払うと、国木田に引っ張られ、去って行った その後ろ姿を呆然と眺めていると、 「えっと…その…」 ハルヒが何かを言おうとしている… 「ごめん…帰る!」 と言い、ハルヒがベンチから離れ駆け出した 「おい!ハルヒ!!」 と叫んだが、ハルヒは振り向いてもくれずそのまま去って行った 一人自宅へ帰り、部屋に戻った… あれはよくなかったかもしれない… だがあまり後悔はしていない というか殴ってやるべきだったろうか… 谷口がハルヒを馬鹿にした それが俺の勘に触っただけだ そしてさっきの考えと行動をまとめ…俺は自分の思いに気がついた 『ハルヒのことを好きになりつつある』 いつもいつも周りのことを考えず、半場やけ気味になっても突っ込んでいく 俺も朝比奈さんも長門も古泉も… 全員がハルヒの思いつくがままに動いてきた たまには、本気で嫌になったり、こんなことも楽しいじゃないか、とも思ったり… 俺もハルヒに会って色々と変わったのかもしれない 俺がもし『曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?』とあの日話しかけなかったら… 今頃、谷口と国木田で馬鹿三人組みになっていただろう それに朝比奈さんにも、長門にも、古泉にも会わなかっただろう だから今、俺がSOS団に所属しているのは本望なのかもしれない だらだらと過ごす毎日 ただそれが、4人といるだけの生活が当たり前の様になってから気づいた この非日常的な『当たり前』こそが俺の望んでいた高校生活なんじゃないか? 巨大カマドウマに襲われたり、クラスメイトに殺されそうになったり…未来に飛ばされたり… こんな非日常が楽しい…そんな気持ちがどこかにあったんじゃないか? そして、昨日の長門と古泉の発言で、俺はまた変わってしまった 『涼宮ハルヒはあなたに恋愛感情を芽生えさせている』 『涼宮さんはあなたのことを気にしています』 この二言で十分だった 俺は今日一日、ハルヒの見方が変わった あいつの何気ない笑顔、褒めるとそっけなくする態度 そんな仕草が愛らしく感じれるようになっていた… いや、今気づけばずっとそんな感じだったのだろう… ハルヒが俺に向ける笑顔… 今思い出せば、俺はハルヒの思いに気づいていたのかもしれない… だが、気づいてしまえば日常が変わってしまうかもしれない… そんな思いがどことなくあった気がする… でも、そんな思いでは終わらせない 俺は世界を救うためではなく、自分のためにハルヒに告白をする 勝手かもしれんが、これは譲れんぞ 文句があるんなら出て来い 俺は何がなんでも自分の意思でハルヒに告白するからな 俺は一旦風呂に入り、自分の考えをまとめていった まず、俺はハルヒに連絡を取らなければいけない… 風呂から上がった俺は、すぐさまハルヒに電話を掛けた 何回かコール音がなって『留守番電話サービス』が流れ出した 一度切り、もう一度掛け直す …だが、ハルヒは出てこない… なんでだよ 俺は古泉に電話を掛けた コール音が一度鳴る前に古泉の声が聞こえてきた 「どうしたんですか?何かあったんですか?」 俺は古泉に分かる限りのことを説明した 「そうですか…」 と力なく声が返ってきた 「実は組織の者が涼宮さんを目撃しているんです。少し元気の無さそうな顔で家へと帰って行ったようですが…」 「そうか…」 でも何故俺の電話に出てくれないんだ? 「分かりません…でも、電話に出てくれない以上会うしかないでしょうね」 「会うって…今すぐか?」 俺は窓の外を見る とっくに日は沈んで空を黒い雲が包んでいる 「今日はもう遅いですからね…明日にした方が懸命でしょう…」 俺はその言葉を聞き、ため息をついた 俺は何をしてしまったんだ… ただハルヒのことを思って… 「あなたは今自分の気持ちに気づいているんでしょう?」 ああ、お前らのおかげでな 「だったら簡単な話です。あなたがちゃんと自分なりに想いを伝えればいいだけのことです」 こいつ、そんなことさらっと言うなよ… 「今から涼宮さんの自宅の住所を言います。明日必ず涼宮さんに想いを伝えてください」 お前…いつハルヒの家なんか調べたんだよ 「そんなこと、転校してくる以前から知ってますよ」 「それで、直接会うのか?」 「当たり前でしょう。電話に出てする告白なんて意味を成しません」 そりゃ…電話で言う気はなかったが… 「明日の行動はおまかせします。ですが、間違ってもいつものように嫌味っぽく言ってはいけませんよ」 俺はそんなに嫌味っぽく喋ってるのか? 「いえ…明日くらいは涼宮さんを女性として見てあげてください」 そんなこと言われなくても分かってる 「そうですか…それじゃあ住所を言います」 そう言って古泉はハルヒの家の住所を言っていった 俺は机の近くにあった紙に住所を書いていく ハルヒの家は案外遠くなく、自転車で30分も掛からない場所だった 「私から言うことはもう何もありません。あとはあなた次第ですよ」 俺は「ああ」とだけ答えを返した ベッドに仰向けに倒れ込み、俺は考える もしかしたら俺の告白で今までの日常が全くの別物になってしまうかもしれない… 告白とはこんなに自分を追い詰めてしまうものなのか…と思ったが、あいつに想いを伝えることができればいいんだ 駄目なら駄目 新しい世界を満喫してやろうじゃないか どっちにしたって俺はお前の近くにいてやるぞ 次の日、目が覚めたのは午後3時だった 空は異様なまでに分厚い雲に覆われている 夜中まで色々と考えていたからだろうか…頭が重い… だが、今日は必ずしないといけないことがある 世界のためでもあるが、俺のためでもある 『ハルヒへの告白』 俺は身支度を済ませ、ハルヒの家へと向かった 色々な考えが頭に浮かび上がってくる 告白した後はどうなるんだ… ハルヒはどう答えてくれるんだ… もし駄目だったら… そうこう考えているうちに着いてしまった 2階建ての家 なんとなく俺の家の形に似ているような… 俺は深く深呼吸をし、扉の前へと向かった 大丈夫…落ち着こう、俺 そう言い聞かせ、俺はチャイムを押した 誰か出てくるまでが異常に長い… 早く誰か出てくれ… 俺は掌に汗を握りつつ、ひたすら待った まるで何十分も経ったのかと思うほど長い間 尋常じゃないくらいの心音が体中に響いていく すると、突然扉が開いた 出てきたのはハルヒだった 俺の顔を見て、一瞬驚いていたがすぐ目を逸らし 「何よ。ってかなんで私の家知ってんのよ」 と小声で喋っている 「少し、大事な話があるんだが…いいか?」 と聞いてみる ハルヒは下を向いたまま… 少しくらい目を合わせてくれよ… 本当に大事な話なんだ… ハルヒはそのまま数十秒黙ってから… 「今忙しいから…」 と言い、勢いよく扉を閉めた 「ハルヒッ!!」 大声で呼んだが、もう遅かった… ガチャッという音とともに扉の鍵も閉められた… 悪態をつくしかなかった 自分の自転車を蹴り、自分の不甲斐なさに腹が立った… 俺がハルヒに何かをしてしまったのかは分からない… でもあいつを悩ませるようなことを俺はしてしまった そんな自分にどうしようもなく腹がたち、それすら覚えていないという自分に自己嫌悪の念がのし掛かってきた でも、悩んでいてもしょうがない 俺はハルヒに電話を掛けた だが、何度コールしてみてもハルヒは一向にでようとしない 仕方なく古泉に連絡を入れると 「分かりました。僕からも掛けてみましょう」 と言い、一旦切られた と同時に雨が降り始めた このくそったれが… 思いっきり追い討ちじゃないか っていうか雨なんか降らないでくれ…振られたみたいで…やりきれなくなる… 数分後、古泉から着信がきた 「駄目でした。僕からの連絡に出てもらえません。一応朝比奈さんと長門さんにも頼みましたが、駄目でした」 そんな…俺以外のみんな連絡すら受け付けてくれないのか… 「俺は…何をしたんだろう…」 「それはあなたにしか分からないでしょう…」 古泉はため息をつく… 「今のところ閉鎖空間は消えています。たぶん昨日のあなたが涼宮さんに何らかの影響を与えたのでしょう。 今涼宮さんはSFの小説を書いていませんし、創造も全くしていません」 そうか… 「ですが、このままではいけません…」 「どういうことだ?」 「今、涼宮さんは精神的にかなり不安定な状態で留まっています。このままならまだ大丈夫なのですが、 このままの状態を保つことはできないそうです」 出来ないそうです?って誰が言ってたんだよ 「さっき長門さんに聞きました。長門さんによれば、今涼宮さんは閉鎖空間をすぐにでも作れる状態にまできています。 簡単に言うと、コップにいっぱいの水が入っている状態です」 例えが良く分からんぞ ちゃんと説明してくれ 「ですから、そのコップに入っている水が涼宮さんの…今は何か分かりませんが、 まぁ『憤りや悩みの塊』のようなものだと思ってください。これが今ふちいっぱいまで溜まっています」 だから? 「この中の水が溢れなければ、それでいいんです。ですが、あなたと今度会った時、あなたの行動によっては…その水が溢れ出します。 つまり閉鎖空間が作られることになります」 「でも、閉鎖空間が出来たとしても、お前ら超能力者が処理するんじゃないのか?」 「そうです。ですが、今回は訳が違う。長門さんによると次の閉鎖空間が発生するのは地球全体規模なんです」 地球全体? 「つまり、地球全体に閉鎖空間が出来てしまいます。そして…」 古泉がここまで喋って一旦間をおいた そして 「私たちでも片付けきれない神人が出現する可能性があります。そして対応できなくなった神人が…現実世界に現れるでしょう」 おいおいおい、いくらなんでもそりゃないだろ あんな神人のオンパレードなんかされたら半日で地球は穴だらけだぞ 「どうやったら止めれるんだ?」 「神人の行動は私たちだけでは対応しきれないでしょう…もって一日…いや、二日も経つ前に…」 今俺の近くに神様とやらがいるのなら、これが全て嘘だと言って欲しい 「じゃあ、逆にその水を取り除くことだって可能なんだろ?」 「たしかに出来るかもしれません…ですが、あなたは何故涼宮さんが悩んでいるのかが分かっていないのでしょう?」 そうだ… 俺はハルヒが何故あの日帰ってしまったのが分からなかった… ただ必死に谷口に迫っていって… 「あなたが涼宮さんの『憤りや悩みの塊』の元であるそれを思い出さない限り、難しいかもしれません… とにかく明日は必ず学校へ来てください」 当たり前だ こんな気持ちのまま終わらせるつもりはない 絶対にいつもの日常に戻してやる そして俺の想いを… ハルヒ、お前に伝えてやる 次の日、俺はいつもよりかなり早く学校へ来た 何故か、鍵は開いているのだが教室には俺一人だけ 一人席につく そのまま外を見つめ呆然とする ハルヒが来ないと何もできないからな… しかし、いくら待ってもハルヒは来ない クラス全員の椅子が埋まり、そろそろ担任が来る時間だと言うのにハルヒは来そうにない… 結局ハルヒは来ず、岡部が入ってきた… 一体どうしたんだよ ハルヒ… 俺はふと、自分の机の中にあった紙に気づく 小さくて気づかなかったが、どこかで見たことのある字だった 『今日、午後5時 屋上に』 たったそれだけ… いつも書く字とは違い、少し丁寧な字… あいつの字がノートの切れ端に書かれていた 俺はその紙を見てから何度も今までのことを思い出していた SOS団が出来てから… そして今日までのことを… 気づけば、午後の授業が終わり、皆下校している時間になっていた どれだけの間呆けていたのだろう… 俺はあの切れ端を一度見たあとポケットにしまい、屋上に向かった 屋上の扉を前にして時計を見る ちょうど5時… ふぅっ…と息を吐き、自分に言い聞かせた 『俺はハルヒに想いを告げる』 もちろん自分のためにだ 世界のことなんか俺にはどうでもいい 俺は屋上への扉を開けた 夕焼けをバックに、仁王立ちでこっちを見ていた 「ぎりぎりセーフよ」 と言い、俺の前までやってくる 表情はどことなく寂しげだ 「あんた…怒らないの?」 なんで?俺が怒るんだ? 「だって…私、電話出なかったでしょ?」 「ああ、でも怒るほどのことじゃないだろ?」 「そう…なの?」 とハルヒは少し表情をくずした 「実はね…ずっと悩んでたのよ…あんたの言葉を聞いてから…」 俺の言葉? 「そうよ…正直、びっくりというか…」 そう言ってハルヒは俯いた ちょっと待て? あんたの言葉って…何かいったのか?俺 「何って…谷口に言ってたでしょ?」 「ハルヒ…俺何か言ってたか?」 その言葉を聞いてハルヒは 「あんた自分で言ったことも覚えてないの?私のことを変わり者って言った後、あんたすごい顔で谷口に言ってたじゃない! なんか…その…私のことを…」 ハルヒはかなり本気で怒っているようだが…後半はまた俯いてしまっている 谷口に…言った? あの時の…全部…声に出てたのか? 「ハルヒ…あー…どこらへんまで覚えてるんだ?」 と不安げに聞いてみると 「全部に決まってるじゃない!!あんたがあんなこと言うなんて思ってもみなかったわよ!!」 あんな台詞を全て口に出してたなんて信じられない 俺は熱くなると、そんなに思考が回らなくなる人間だったのだろうか… いや…頭は回ってたんだ… 後悔しつつ、思っていたことを既に言ってしまっていた自分が恥ずかしかった 「でね…私…どうすればいいのかなって…結局答えが見つからないであんたを呼び出しちゃったんだけど…」 ハルヒが今まで見たことのないような表情で俺に言う 「私はね…あんたのことが好きだったのよ」 突然の告白…に俺は驚く 「最初はね、私に空気みたいに一緒についてくれててさ。どんなわがままを言ったときだっていつも一緒に居てくれた。 本当に頼りになるなって…中学校じゃそんなやつは一人もいなかったからね」 「でも、キョンは違った。いっつも文句言いながら私の側に居てくれる。ひどいことをしたって許してくれる。 そんなキョンがあの日…階段から落ちた日…私は本気であんたの心配をしたわ」 「自分でもびっくりするぐらい。何故かキョンを失いたくないって…思ったの…でね、気づいたらキョンのことが好きだったのよ」 あの日俺が階段から落ちた日… 古泉によれば、ハルヒの焦りようは尋常じゃなかったらしい 「でも…キョンはいつも私の行動に文句をつけてたでしょ?だから告白して付き合えるなんて思えなかったの」 それは違う…俺は… 「それに…もし告白したら、今までの日常が壊れちゃうんじゃないかなって…」 …ハルヒは…俺と同じことを悩んでいたのか…? 「キョンが一緒に居てくれるのは嬉しい。でも、今のみんなで街を探索したりする…何気ない活動も楽しくて仕方が無かったの… だから…告白も出来ないくらいなら…そんな気持ちを忘れたいって思うようになったの…」 「でもね、昨日のキョンの一言で私の考えが変わっちゃったの。好きって気持ちを忘れようとしてたのに… あんたのせいで…しかもあんなこと言うなんて思わなかったし…」 「だから勝手に…その、びっくりしちゃって…顔なんか合わせられなかったのよ…」 ハルヒはここまで言い切って、ふぅと息をついた ハルヒがここまで俺のことを想っていてくれた… 驚いていたが、物凄く嬉しかった… それに俺は答えたい…お前の告白に… そして、俺の想いを伝えた 「俺はな、お前のこと好きだとは思ってなかったんだ」 その言葉を聞いてハルヒがこちらを向く お前…もう涙目になってるぞ… 俺は落ち着いて続きを言う 「最初は…変わってるなぁ…としか思わなかったんだ…それにいきなりSOS団だって立てちまうし… あまりにも突然過ぎる行動が多かったんだよ」 さらに不安げな表情になっていくハルヒ 大丈夫だ 安心してくれ 「けどな、俺もお前と同じで非日常的な生活を望んでたんだよ。そしてそれを叶えてくれたのがハルヒ…お前なんだ」 その言葉にキョトンとした顔をこちらに向ける 「お前の行動はいつも突然で、おかしいことばっかりだった。でも、お前と一緒にいるとそれが楽しくて仕方が無かったんだ。 だから俺はいつもSOS団に顔をだしたし、お前がバカなことやってたって味方だったんだ」 そうだ…俺は今の生活が楽しくて仕方が無かった 「でも、俺は自分の気持ちに気づかなかった。いつもお前といることが楽しいと感じているだけだと思ってたんだ… でも違った…俺はいつからかお前の気持ちに気づいていた…気がする…」 「俺はお前の笑った顔にびくついてたんだ…なんでお前の笑顔を見てこんな気持ちになるのか分からない… だから頭の中で必死に言い訳を続けたんだ。『ハルヒが笑っているだけだ』と…俺がお前に恋心とやらを抱いているんじゃないと… そうやって、俺はお前の想いから逃げてたんだ」 「けど、俺はお前の前で無意識にあれだけのことを言ったんだ」 あれだけのこと… 自分で言えば、分かって当然だ 俺はハルヒへの想いを必死になって隠していた 「でも、もう隠すのは嫌なんだ。だから…」 そこまで言って、黙ってしまった… 俺…続き言えよ… ラストだぞ ラスト 『好きだ』って言えばいいんだって… 目の前のハルヒが顔を真っ赤にしている 「えと…その…」 ハルヒも何かを言いたげにしている… あと一言だ あと一言 そして目をつぶり深呼吸をした瞬間あの一言を言った 「俺は… 「私は… その言葉に俺とハルヒは絶句 なんてタイミングなんだよ 俺は狙ってやってないぞ…だいたいそんなに器用なことはできん 二人の言葉が重なるなんて… おいおい…こんなことはドラマの中だけで十分だろ… 俺はハルヒの前で思いっきり深呼吸し 「えっと…ハルヒ聞いてくれ」 唐突に口を開いたが、 「ちょっと待って、私が先よ!私に言わせなさい!」 と、ハルヒに発言の権を取られた ハルヒは俺のネクタイをわしづかみ顔の前まで引き寄せた 顔を真っ赤にした、涙目のハルヒ 思わず『可愛いよ』と言ってやりたいところだが、今はハルヒの一言を聞こうじゃないか さぁ、ハルヒ 思いっきり言ってくれ 「私…あんたのこと好きだから」 言ってしまった… ハルヒはそんな顔をしながら俺の顔を見つめる だが、ネクタイは離してくれない 俺は少し腰をおったままの姿勢で言ってやる 「俺もだ…俺もお前のことが好きだ」 そう言った瞬間、ハルヒは声を上げて泣き出した それも泣き方がすごい… お前、どんな泣き方だよ… ああ…鼻水でちゃってるし… 俺はハルヒを引き寄せて、腕で包み込んだ 俺の胸あたりで、子供がぐずるような声をだしつつハルヒが泣いている 胸元がじんわりと暖かくなっていく そんな姿がとても愛おしく感じられる ああ…なんか最近俺の思考が変になってきたな… おかしいぞ 俺 どのくらい泣いていたのだろう… ハルヒは顔上げて何か言いたげにしている 「どうした?」 と聞くと 「びっくりして…ちょっと…」 照れくさそうに笑うが涙でてるぞ あと鼻水 ティッシュが無いので、制服の袖で鼻を拭いてやる そして、少し落ち着いてから 「あんたがそう言ってくれるなんて…思ってなかったから…」 「でも、そう望んだんじゃないのか?」 ハルヒにはその力がある 願えば、そんなことは簡単に叶ってしまう だから俺はハルヒにちゃんとした答えを出してあげられた… いや、でもこれは俺の想いだ ハルヒが想ったからじゃなくて、俺が勝手にハルヒを好きになっただけ そんだけだ ハルヒはひたすら泣いている なんだが俺が泣かせてしまったようで…たしかに俺が泣かせてしまったんだけど… 俺はハルヒの肩に手を置いた そして、おでこにキスをする ハルヒは…まるでバカを見るような目で俺を見ている あー… やっちゃったよ 俺 これもあれか? ハルヒの想像力ってやつか? っていうかなんでおでこにしたんだよ… 普通口だろ? 「口じゃないの?」 お前、やっぱり超能力者だろ… なんでそうやって俺の考えが読み取れるんだよ… 「普通は口でしょ?」 ハルヒは潤んだ瞳で俺見つつ言った 俺の答えを待っているようだ いきなり指摘される…やはり照れる… 俺がどうしようかと迷っていると 唇に暖かい物が触れた ちょうど人の体温くらいの…たぶん唇だ 確証はないが自身があるぞ というか反則だ…攻撃側は俺だろ? 俺は呆けた顔でハルヒを見た 「仕返しよ。あんたにやられっぱなしじゃ嫌だからね」 と言い、意地悪っぽい笑顔を俺に向け、抱きついてきた 後日談 昨日の告白の後 ハルヒはハルヒじゃなかった 異常な程ハイテンションになるのかと思っていたが… まるで長門のようにおとなしくなってしまい 「あー。嬉しい」 と小声で喋りつつ俺をやたらと叩く その後普通に帰宅しようとしたが、 「キョン。家まで送ってよ」 とのご命令があったので、団長様を家まで送ってやった 自転車に二人乗りをしている途中 「明日からは、私もあんたの家に行くから」 とハルヒが喋りだした 「ん?」 とわざと呆けてやると 「だから!あんたの家まで朝行くから!一緒に登校!」 「はいはい。時間は?」 そんなことでムキにならんでくれ 可愛くないぞ 「そ、そう?」 「嘘だ」 こうやってからかうとすぐムキになる ちょ、痛 お前殴りすぎだ 俺はどさくさに紛れて 「冗談だ、冗談。可愛いぞ」 この一言で我らが団長は顔を真っ赤にして 「バカ…」 の一言 「明日は…7時くらいでいいか?」 「うん…」 やけに素直なハルヒもまた珍しい 俺はそう約束をとりつけ、家へと帰宅した 結局ハルヒは閉鎖空間を生み出さなかったらしい とのメールが古泉から届いていた。 ハルヒに告白してから次の日 俺はいつもより早く目覚めた まぁそれなりの目的があるからな 適当に身支度を済ませ、早々に家を出た 今日はいつもの登校とは違う 家を出るとすぐそこにハルヒがいる 「あんたってホントに女を待たせるのが好きね。その趣味直した方がいいわよ」 告白したって俺への態度はいつもとなんら変わりない というか変わって欲しくないな 「あー。まぁ今後は直すように気をつける」 俺はそう言い、自転車を引っ張り出してきた というか俺にはそんな趣味はないぞ 「だったらさっさと直してよ」 ハルヒは俺に指をさしつつ言った 今日からはハルヒと一緒に登校になる しかし何故か、ハルヒは俺と全く同じ自転車に乗ってきた 「昨日近くに売ってたからね。親に買ってもらったのよ」 って自転車まで一緒にするなよ 「いいじゃない。ペアルック?みたいなもんでしょ」 「だったらキーホルダーとかの方がいいんじゃないか?」 「まぁなんでもいいじゃない」 今日のハルヒはいつものハルヒだ こいつはこの2日間に何があったかなんて知らないんだろうな… 他愛のない会話を女の子と楽しみつつの登校… 男子学生なら一度は夢見る一時だろ 今となっちゃあのハルヒが俺の隣にいるわけだが… 俺はこれはこれで…というかかなり満足している 学校への道がこんなに短く感じたのは、生涯初めてかもしれん… 俺達は自分たちの教室へと入る 少し早く来すぎたらしく、まだ一人もいない 俺とハルヒは教室の端にある席へと座る 「今日から活動再開か?」 という問いに 「もちろんでしょ!」 と満面の笑みを浮かべた やっといつもの日常が戻ってきた でも今日からは少し違うな 俺はハルヒの彼氏になったんだし… 「なぁ、ハルヒ」 「何?」 なぜかハルヒは…俺の問いに嬉しそうに反応する 「俺、ポニーテール萌えだから」 「は?」 と呆けた顔のあと 「それどっかで聞いたことあるわよ」 「そうか?」 「たしか…夢でみた…気がする…」 それは夢じゃない…はずなんだけどな… 「だからさ、髪が伸びたらポニーテールにしろよ」 END
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/261.html
ある日の事だ。 教室に行くとハルヒが先に来ていた。 「よ、おはよハルヒ」 「キョン」 「ん?なんだ?」 「キョンキョンキョンキョン」 「一体どうしたんだハルヒ?」 「キョーンキョンキョン」 これは何事だ? するとハルヒはルーズリーフを取り出しこう書き殴った。 『何しゃべっっても「キョン」になっちゃう。どうしよう』 何がどうなってるんだよ、おい・・・ ふと廊下に目をやると古泉と長門が立っているのを発見した。 俺は二人に相談しようと立ち上がったがブレザーの裾をハルヒに掴まれ動けなかった。 「ちょっと、トイレに行ってくるだけだから」 「・・・キョン~・・・」 そんな涙ぐんだ瞳でかつ上目遣いで見ないでくれ。 思わず抱きしめたくなるじゃないか。 「お前ら、朝っぱらから何してるんだ?」 出た。アホの谷口の登場だ。 「なんだ?プレゼントでもせがんでるのか?」 「違う。どうしたらそういう発想になるんだ?」 「またまたー。で、涼宮はキョンに何を欲しいってせがんでるんだ?」 「キョン」 教室中が静まりかえった・・・ 無論、俺も例外ではなく固まっていると俺の携帯が鳴り出した。 はっとした俺は携帯を取り出し開いた。 携帯のディスプレイには「新着メール1件」と表記されていた。 メールは古泉からだった。 『どうやらこちらに来るには無理があるみたいですので、簡潔に申し上げます。今回どうやら涼宮さんは 「キョン大好き!!いっその事、世界が全部キョンだったらいいのに」と考えたようです。』 あぁ、そこまで思われてるなんて俺は幸せ者だなぁ等と思いながら古泉に返信した。 『一体どうすりゃいいんだ?』 1分後・・・ あ、返信来た。 あいつ、メール打つの早いな 『涼宮さんに、そんなに沢山いたら困ると思わせるのがベストでしょう』 『具体的には?』 … 『あなたという存在が一人だからこそ価値があると思わせて下さい。よろしくお願いします』 と言われてもな・・・ あ、一つ簡単な方法があるな。 しかし、これをやると・・・ あぁ、こうなりゃヤケだ。 「なぁ、ハルヒよ。俺は世界中がハルヒばっかりだったらいいなと思ったことがあるんだがな」 「キョン?」 「あくまで俺が好きなのはお前という涼宮ハルヒだから沢山のハルヒが居たらたった一人のお前を見つける事が出来ないと思うんだがどうだ?」 「キョン!!あたしもキョンが大好き!!」 「ん?言葉が元に戻ったな」 「あれ?ホントね。これもキョンの愛の力かしら」 この後、散々クラスメイトにイジられたのは言うまでもない・・・ はぁ、やれやれ・・・ 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/27.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡 翌日の朝。俺は懐かしい早朝ハイキングコースを歩いて学校へと向かっていた。 とは言っても、向こうの世界じゃ毎日のように往復していたけどな。 北高に入り、下駄箱で靴を履き替えていると、 「おっ。キョンくん。おはようっさ。今日もめがっさ元気かい?」 「キョンくん、おはようございます」 鶴屋さんの元気な声と朝からエンジェル降臨・朝比奈さんの可憐なボイスが俺を出迎えてくれた。 何か向こうの世界じゃ何度も聞いていたのに、帰ってきたという実感があるだけで凄く懐かしい気分になるのはなぜだろう? 靴を履き替え終わった頃、長門が昇降口に入ってきた。 「よう、今日も元気か?」 「問題ない」 声をかけてやったが、やっぱり帰ってきたのは最低限の言葉だけだ。ただし、全身から発しているオーラを見る限り 今日の朝は気分はそこそこみたいだな。 階段を上がっている途中で、なぜか生徒会長と共にいる古泉に遭遇する。 「やあ、これはおはようございます――どうしました? 何かいつもと雰囲気がちょっと違うように見えますが」 「朝からお前と遭遇して、せっかくの良い気分がぶちこわしになっただけだ」 「これは手厳しい」 ふと、俺はあることを思い出し、古泉と生徒会長を交互に見渡して、 「とりあえずご苦労さんとだけ言っておく」 「はい?」 俺の台詞の意味がわからず、呆然とする古泉と生徒会長を尻目に俺は自分の教室へと向かった。 そして、教室に入ってみれば、ハルヒのしかめっ面が俺をお出迎えだ。 少しはこっちの気分を読んで欲しいぞ、全く。 「遅い! せっかく良いもの見つけたから、朝ご飯食べながら学校に走ってきたのに!」 「お前の都合でどうこう言われても困るぞ」 団長様のありがたい怒声を聞きつつ、俺は自分の席に座る。 見ればハルヒは机の上にチラシを沢山並べていた。どうやら何かの催しの案内らしいな。今度は何だ。 全米川下り選手権にでも丸太に乗って参加するつもりか? 「ほら見てよ、これって凄くおもしろそうじゃない? ついでにSOS団のアピールもバッチリだわ! これは――」 意気揚々と語り始めるハルヒ。俺はそれを耳から垂れ流しつつ、ちょっとした考え事に入る。 最初に言っておくが、これは昨日の夜家に帰って風呂に入りながら考えた俺の妄想だ。 俺はずっと向こう側の世界に行って、SOS団を作り上げるまで試行錯誤しまくってきたわけだが、 実際のところ不可解な点もたくさんあるのが実情だ。 特に情報統合思念体については明らかに矛盾している点がある。連中は長門によるハルヒの力の使用は二度あって、 一度はハルヒのリセットで隠蔽、もう一つは直前で阻止したようだったが、今俺が帰ってきた世界の長門の世界改変分が カウントされていないのはなぜだ? 最初に聞かされた話じゃ、ここの連中とあっちの連中も結局は同じもののはずだからな。 そう考えれば、俺の知る限り長門による力の行使は三回あったはず。これはあきらかに矛盾している。 じゃあ、実はハルヒの勘違いで、こことあっちの連中は実は別物と言う可能性はどうだろうか? 一応パラレルワールドみたいなものだし、 その分だけ情報統合思念体が存在していてもおかしくはない。が、それはそれで矛盾がある。見たところ同じような考えを持った 存在だったことを考えれば、この世界で長門が世界改変を実施したら、同じように長門の初期化、さらにハルヒの排除という 流れになるんじゃないだろうか。向こうの連中は過剰反応しただけで済ませるにはどうにも腑に落ちない。 まあ、なんだ。前置きが長くなったが言いたいことはこういうことだ。 俺が去った後にリセットされてやり直されている世界――それが今俺のいる世界なんじゃないかってね。 つまり俺はずっとここに至るまでの軌跡をずっと描き続けてきたってことだ。 情報統合思念体にも実は俺たちとは違うが時間の流れみたいなものがあって、あの交渉の結果、 この世界では長門の世界改変がスルーされた。約束通りに。 それだといろいろつじつまの合うことも多い。 ハルヒがどうして宇宙人(長門)・未来人(朝比奈さん)・超能力者(古泉)・異世界人(俺)がいることを望んでいたのか。 それは最初からSOS団を作るために、探していたんじゃないだろうか。だからこそ、不思議なことを探してはいるものの、 全員そろっている現状に密かに満足しているのではないのか。それだと唯一いないと言われている異世界人は、俺だし。 それに…… ―――― ―――― ―――― なーんてな。考えすぎにもほどがある。本当にそうなら、今目の前にいるハルヒは自分が神的変態パワーを持っていることを 自覚していることになっちまうが、それなら最初に世界を作り替えようとしてしまったこととか、元祖エンドレスサマーとかの 説明が全くつかなくなってしまう。自覚してあんなデリケートな性格になっているんだから、あえてやるわけがない。 普段の素振りを見ても、そんな風にはとても見えないしな。自覚しているハルヒを知っている身としては。 ……ただし。 ――あんたの世界のあたしがうらやましい。何も知らずにただみんなと一緒に遊んでいられるんだから―― この言葉が少々引っかかるが。 まあ、どっちにしろ凡人たる俺にそんなことがわかるわけもない。一々確認するのも億劫だし、面倒だ。 現状のSOS団に満足しているのに、わざわざヤブを突っつく必要なんてあるまい。 俺の妄想が本当かどうかはその内わかるさ――その内な。この世界も別の神とか宇宙的勢力とか出てきて、 まだまだ騒がしい非日常が続いて行きそうな臭いがプンプンしているし。 「ちょっとキョン! ちゃんと聞いているの!?」 突然ハルヒが俺のネクタイを引っ張ってきた。やれやれ、妄想もここまでにしておくか。 俺はハルヒの手をふりほどきつつ、 「で、次はどこに連れて行ってくれるんだ?」 その問いかけにハルヒはふふんと腕を組み、実に楽しそうな100W笑顔を浮かべて、 「聞いて驚きなさい。次はね――」 ~完~ 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5258.html
※オリジナルキャラ・ある意味BAD END注意 これは世の中を安全に生き抜く方法を教える……、 1人の女子高生の物語である。 部室 ハルヒ「ねぇ、キョン」 キョン「んー?」 ハルヒ「――……やっぱりいいわ。」 キョン「えー?なんだよー。」 ハルヒがもじもじしている。 ハルヒ「だって~はずかしいんだも~ん。」 キョン「気になるじゃんかよ――。教えてくれよ――。」 ハルヒ「しょうがないわね~~。も~~。じゃあ言うよ~~。」 キョン「うんうん!」 ハルヒ「え~と、実は~、この学校は~、…」 するとハルヒは、急に真面目な顔になり、 おそろしいことを言った。 ハルヒ「あと3分で爆発する!!」 キョン「…」 キョンは何が何なのかわからない様子。 突然、学校が大きく揺れた。 ゴゴゴゴゴ キョン「!?」 ビーッビーッ 地震のように、大きく揺れる中、警報音がとどろき、 『爆発まであと3分! 爆発まであと3分!!』 キョン「うわああああああぁぁぁ!?」 キョン「ちょ…、ちょっと…!!ホントに爆発するのか!?」 キョン「なっ…、何でこんなことになったんだよ!!」 キョンはハルヒに問いただす。 すると彼女は、 こう言った。 ハルヒ「ひまつぶしにコンピ研の部室入り口の近くにある、 自爆スイッチを押したから」 キョン「物騒なモン学校にとりつけてんじゃねーよっっ!!」 ハルヒ「というわけで今回は私が! 学校が爆発しそうなときの逃げ方を教えてあげるわ!!」 キョン(…なんか、初めてだなこーゆー展開……) キョン「と…とにかく細かい事はいいから…、 さっさと逃げようぜ!!」 キョンは走り出したが、 ハルヒ「待ちなさ―――――いっ!!!」 ドロップキックを食わされた。 キョン「おひょ―――――っ!!!!」 ハルヒ「あんたそんなカンタンににげちまったら…、 380万円もして自爆スイッチを買って設置した意味が ないじゃないの!!」 キョン「高ぇな自爆スイッチ!!」 ハルヒ「いい? 爆発まであと3分…、 まあ1分あれば脱出は可能…。 …とゆーことは…、 あと2分は遊んでいいということよ―――っ!!」 キョン(余裕だ――――――っっ!!) ハルヒ「そうと決まったら、ババ抜きでもして 遊びましょう!! 新入部員の高橋君も連れてきたから!!」 高橋「あっ、どうも」 キョン「こんなときにオリジナルキャラ 登場させてんじゃねーよっ!!」 キョン「もうっ!!早く逃げるぞ!!」 するとハルヒは、窓の方に指をさして 言った。 ハルヒ「逃げるならあの窓が近道よ!!」 ハルヒはキョンの体をひょいっと持ち上げて、 キョン「ちょっ、…ちょっとハルヒ!!」 ハルヒ「えいっ!!」 その窓のほうに投げた。 キョン「うわっ!!」 キョンの体は窓枠にスポッと入った。 キョン「…、」 ぐっぐっと手を壁に押し上げても、窓から抜け出せない。 キョン「抜けねえぇぇぇぇ――――――っっ!!!」 ハルヒ「だっ、…大丈夫――っ!?」 キョン「うわ――――っ、ハルヒ、早く抜いてくれ―!!」 『爆発まであと1分。爆発まであと1分。』 ハルヒは一生懸命、顔をこわばらせながら、 キョンの体を引っ張っている。 ハルヒ「ぐううう~…。」 そんな姿を見てキョンは キョン「も…もういいよ!!ハルヒだけでも逃げて!!」 ハルヒ「ふざけないで!!ここでキョンを見捨てるくらいなら、 死んだほうがマシよ――――っっ!!」 キョン「ハ…、ハルヒ」 キョンの目から一筋の雫がたれた。 ハルヒ「く、…くそぉ…っ、ふぎぎぎぃっ!!」 ハルヒ「うおおおお、おあああああっ!!」 ハルヒ「無理。」 キョン「………」 キョン「!?」 キョン「まてー!!クソ団長―っ!!アホ―ッ!!」 ハルヒ「うっさいバーカ!!あたし一人だけ助かるんだもんね。ぐはははは!!」 『爆発まで30秒前!』 ハルヒ「ふっ……30秒もあれば楽勝で逃げられるわね。」 『29、28、27、26、25、24、23………ゼロ!!!!』 ドカーーーーーーーーン!!!!!!!! ハルヒ「ありゃーーーーーっっ!?!?」 グラウンドにはキョンとハルヒの2人の遺体があった。 そこにザッザッと誰かが歩いている。 それは高橋だった。 2人を見て高橋、持ってるマイクを片手にこう言った。 高橋「これぞ必殺!!!!!!『タイムワープ』!!!!!!!!」 糸冬 元ネタ『家が大爆発じゃっ!』
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3246.html
5日間熱心に勉学に励んだ後に訪れる束の間の休息。そんな貴重な休日に我々SOS団がどこにいるのかというと── ハルヒが福引で一発で引き当てた温泉旅館に来ている。 開催初日に引き当ててしまったことにより、客引き要素が70%減となってしまったその抽選会はもう悲惨だとしか言いようがなかったが。古泉に言わせれば 「涼宮さんがそう願ったんでしょうね」 とのことで、まぁそれについては初っ端から特賞を引き当てる確率と、 また都合よく5名様のご招待と書かれているその券を見て考えるとと妥当な推測ではある。 普通ならこんなものは家族で行くものだろうと思うのだが、ハルヒは家族に対しては長門が当てたもの (長門が一人暮らしとの説明も踏まえた上で)と言って誤魔化したらしい。 全く、そんな人生に1度、当たるかどうかも分からないような宝くじに匹敵する旅行券を、わざわざ団員で使おうとは。なんて独り言を漏らしたら、 「・・・・・・鈍感」 と後ろから雪融け水のように冷たな長門の声が耳に入った。 さて、旅館やホテルに着くと予想外に子供心というか、とにかく何かが湧き上がってきてウキウキしてくるのは何故だろう。 「探検しに行こう」と言ったのがハルヒではなく俺の口から発せられたものだから他3名は冷蔵庫にあったプリンが食べてみると実は卵豆腐だった、 なんてような顔になっている。まぁ、確かに俺も言い終わった後で多少しまった!とは思ったが。 「あたしが言う台詞でしょうが!キョンはヒラなんだから──」とそれはもう予想していたハルヒの言葉を軽くいなしながら他3名の意見を聞いた。 朝比奈さんはハルヒの機嫌を損ねないような言葉を選ぼうとしどろもどろで、長門はいつもの通り分厚い本を開いて物語の世界へ。 「僕達は・・・遠慮しておきます、2人で行った方が大勢で行くよりも隅々まで探検できるかと」 棄権なんてこのハルヒが認めるはずが無いだろうと思った瞬間 「じゃあいいわ、キョンと2人で行ってくるから、みんなは体を休めてなさい」・・・なんですと? ハルヒ、お前新幹線の中でなにか変なもの食べたんじゃないか、というかお前が一番疲れてるんじゃないかと聞こうとしたがもうすでに握られた手は そのへんの運動部よりも凄い力で引っ張られていき、こうして旅館探索が始まったのだった。 探索、とは言うものの。商店街が用意したような旅館、流石にそれほど広くもなく。地下の遊戯施設に立ち入っては「温泉浸かったら後でみんなで遊びに来ましょう」だとか、 開いてないレストランの前まで来ては「ここ、朝はバイキング形式で食べられるレストランなんだって」とか、つまり極一般的な会話に終わる探検だったわけで。 下見、という言葉の方がしっくりくるなと思うと同時に我が口から「探検しよう」なんて子供のような言葉が出てしまったことを再度後悔していた。 ふと握られたままだった手を見ながら、こんな風にハルヒと2人一緒だったあの日を思い出す。 当時こそ俺はその出来事を考えるたびに、手の届く範囲に拳銃がありさえすれば!なんて思っていたが。 今ではそんなことを考えていた頭の中の自分に鉛玉を撃ち込んでやりたいね。 俺は意外にもハルヒと共にいる時間を楽しいと思えるような性格を手に入れたらしい。と言えば遠まわしだろうか? 流石に俺でも自分の事を一端の健全な男子高校生だと思っているし、女子に全く興味が無いなんて今時の僧侶でも言わない事を、俺が言うわけが無い。 それがこの手を取っているハルヒなのかはまた別として。・・・だがまぁ、一緒にいて楽しい以上俺はハルヒを嫌いではないと自覚している。 「そういえばハルヒ・・・お前1年前と大分変わったよな」・・・1年前は毎日「退屈」、「暇」の言葉を製造し続ける特注機械だったのにな。 「なんか馬鹿にしてる?」っと、心を読まれかねないから少し控えておかないとな。 とはいえ、今でも毎週1回は「退屈」もしくは「暇」と呟きはするのだが。しかし古泉は「今年は例年に比べて本当に閉鎖空間が発生しなくて済んでますよ」と言っていた。 確か最後に発生したのはこの間のゴキブリ騒動の時だったとも言っていたな・・・ このゴキブリ騒動については家庭科の担任教師が入院の為2週間ほど学校を休んでいて・・・ で、それに伴って調理実習室の部屋が2週間閉鎖され、その後「調理実習室から異臭がする」との噂が囁かれはじめてから どういうわけか「調理実習室を調べて対処して欲しい」という話が悩み相談窓口から入ってきたんだよな。それも生徒会から。 生徒会長曰く、「こんな訳の分からない部を黙認させているのだから、たまにはそれに応じた働きも見せてみろ」だとさ。 便利屋じゃあるまいし。とは言うものの「対処してくれればSOS団の正式な承認を前向きに検討する」とのことなので 俺なりにハルヒを説得してさっさとこんな厄介事を片付けようと息巻いていたのだが。 調理実習室前に着くや、漏れ出てくる異臭。マスクを用意していて正解だったと他団員を見回し・・・ 涙を薄っすら浮かべている朝比奈さんに渡し、流石のパーフェクト宇宙人も若干眉を顰めているが・・・長門にも渡し 「ちょっと用事が・・・という訳にはいかないんでしょうね」当たり前だ、古泉。こいつにも渡し 口数が一瞬で0になって少々顔を引きつらせている我らが団長様にもマスクを渡し。 士気が下がりきってしまう前にさっさと開錠してドアを開け──そこから人間の女子2名の記憶は無いようだ。 惨状と言うべきか。2人が床に衝突するのを避ける為に両手が塞がった俺の目の前に表れた光景。 コンセントが外れ、ドアは半開きの冷蔵庫から飛び回る蝿。外からの空気が入ったことによって蜘蛛の子を散らしたように逃げていったがそれでも十数匹は目視できるゴキブリの集団。 長門がいなければこの惨状はあと数週間は惨状のままだったかもしれない。 高速言語を放つと同時にこの閉鎖(されていた)空間にいたゴキブリ、蝿、異臭、異臭元と思われる腐った食材etc・・・は亜空の彼方に消えていったらしい。 「・・・・・・任務遂行完了」マスク姿の長門がそういい終わると同時に鳴り響く古泉の携帯。 「申し訳ございません。・・・久々のバイトのようです・・・」 さて話を戻そう。 確かに四六時中一緒にいて、こいつの機嫌が手に取るように分かるようになった多大な能力を得てしまった俺が見ても、ハルヒは性格が丸くなったと言える。 が、しかしSOS団の活動意義が発足当時から不変であることも分かっているし、それならば何故ハルヒは閉鎖空間を発生させないような性格を得たのか不思議でならない。 「なぁ、毎日楽しいか?」ふと、答えを聞けば全ての疑問が解決される質問をハルヒに聞いてみた。 「あんたはどうなの?キョン」と返されたのは想定外だった。俺か?俺が毎日楽しいかどうかだって? 「・・・まぁ、楽しいと言えば楽しい、かな?」 「じゃあ、そんなもんなんじゃない?」うーむ。ハルヒらしからぬ答えだ。てっきりここで“退屈で暇でどうしようもないことくらいわかるでしょー! そんな質問をする前にあんたが楽しみを提供するよう頑張るのが有意義よー!”なんて罵倒されて、それに対して俺はそれでこそハルヒだと一人感慨にふける展開を考えていたのに。 そんな話を入浴中に古泉に話してみた。こいつならば涼宮の言わんとしていることを俺に分かりやすく教えてくれることだろう。 「それは・・・その通りの意味ですよ」・・・前言撤回。こいつに話したところで俺の脳は疑問を解決することはできなかった。 「フフ、失礼。しかし今まで常に自分の意見を押し通してきた彼女が、あなたに答えを任せた。それがヒントですかね・・・?」 ヒントなんざ言うくらいならとっとと正解を教えろってもんだ。俺はクイズバラエティーで分かりそうも無い難題を吹っかけられて反応を笑われる芸人じゃあない。 なんて言おうとしたがそれはハルヒによって阻まれた。 「お前!ハルヒ!なんで男湯覗いてんだ!」 「おや、体を洗った後で良かったですね、僕達」そういう問題じゃないだろ。 「ふふん、あんたがこっちを覗かないように監視してるのよっ!」俺は紳士だ、見るわけ無いだろうが。 どーだか、とからかうハルヒを俺もついからかいたくなって自分の胸を指差し 「見えてるぞ。」うそっ、という声と同時に崩れる椅子の音。 「あぁ、嘘だ。」 数秒してから返ってくるハルヒの怒声。久々にハルヒの口から「バカキョン」の言葉を聞いた気がするな。 部屋に着くなり用意されていた豪勢な夕食。ガイドブックや旅番組で見るようなまさにそれと全く同じ光景が目の前に広がっていた。 一番乗りで座布団に座ったのは意外にも長門。おそらく初めて見るんだろうな。生まれてまだ・・・4年しか経ってないんだから当然か。 急かすように他メンバーをじっ、と見つめ、全員が座るまでに要した時間は数秒。 ちなみに、長机を2人と3人で挟むように座布団が敷かれ、3人の方に長門、古泉、朝比奈さんの順で座ってしまったので必然的にもう片方には俺とハルヒが並んで座ることに。 長門は火をつけられた小鍋をまじまじと見続けている。分かるぞ、小学生のときの修学旅行で同じ気持ちを味わったもんだ。 ハルヒのいただきますの号令で料理を堪能・・・相変わらず長門の箸は速いな・・・なんて上の空になっていたら。 「ほら、ご飯粒ついてる」・・・まるで長門以外の時間が停止したようだった・・・漫画さながら、俺の頬に付いていたご飯を手に取り食べてしまったのだから。 「フフ。まるで夫婦のようですね」との古泉の声にハッと向こうに顔をやるハルヒ、耳が真っ赤だ。俺も顔が熱い・・・ さっさと食べて遊戯室行くわよ、と話をそらし、急いで飯をかっ込むハルヒ。・・・と俺。結局料理の味を楽しめなかった・・・ 温泉に浸かって腹ごしらえもして。もう快適な睡眠の安全装置は解除されいつでも引き金を引ける状態である。 適度な運動なんてしたらもう完璧に睡魔と書かれた銃弾は俺の頭を貫くね。 「馬鹿なことを言ってないで、次あんたの番よ!」と言うことで、古泉からラケットを受け取り俺なりに奮闘してみたのだが。 こいつはスポーツの神様が背後霊じゃないのかと思える試合だったな。なんで去年の孤島のときよりさらに強いんだよ・・・ ともあれ、何周かすると流石に全員に睡魔と書かれた銃弾は行き渡ったようで、最下位だった俺の奢りのコーヒー牛乳を振舞いつつ、部屋に戻ることとなった。 さて、人間という生き物は不思議なものであり、眠るという目的が別の事象によってなしくずしになる、なんてことはごくありふれた光景である。 この場合の事象とはトランプのことであり、いくつものメチャクチャなローカルルールが絡み合ってしまったそれはもはや大富豪と言えないゲームだったが。 罰ゲームに酒がハルヒの口から提案されたが、流石に高校生だけで来てるのに酒を飲んだ後の領収書を見られたら学校に通報されるかもしれない、 という説得の末これまたお決まりの奢りジュース。もちろんお決まりで俺の奢り・・・ どういう経緯で全員が睡眠という2文字に負けたのかは定かではない。遊びながらそのまま寝られるように放射状に布団を敷きなおしていたから、最後に電気を消した人間でないと知りようがない。 と、考えているのはつまり自分が起きているからである。変なジュースを罰ゲームで飲まされたからだな・・・キュウリ味のサイダーだっけな、うっ、思い出しただけで吐きそうだ。 暗闇にだんだん目が慣れてくると隣の布団が空になっていたのに気づいた。ハルヒだ。 トイレに行ってるのだろうか?という考えはそのまま5分過ぎたところで否定された。外に出て涼んでいるのかもしれない、が、ひょっとしたら。そう考えると既に俺は部屋を出ていた。 何故ハルヒがいないとこうも落ち着かないのだろうか。・・・そういえば世界が改変されていた時も。 まだ20年すら生きていない俺がこんなに1人の女子で心が不安になるのか?生意気すぎるにも程がないか。いや──俺は俺を誤魔化している・・・のか。 ぴたりと足が止まった。 「俺は、ハルヒのことが──好きなのかな」 がたたんとなにかに躓く音。振り返るとハルヒがソファーに尻餅を付いていて、弱々しい非常灯に照らされたその顔はかすかに赤くなっていた。・・・まさか。 「い、今の聞いてたり・・・?」 無言で頷くハルヒ。 「聞かなかったことにしてくれたりは・・・?」 無言で首を振るハルヒ。 ああ、俺の人生はここで終わったな。明日になれば団員全員に、月曜日になれば学校の笑い話のレパートリーに1話追加されるわけだ。 「あ、あたしも・・・同じ」 やれやれ。こういう話で笑われるのは男だけと相場が決まっているな。古泉あたりの端正な顔立ちの奴なら逆に七不思議に追加されそうだがな。 こんな普通さしか取り得の無い男子学生なら普通という項目が異常という項目に書き換えられて別のファイルに入れられるだけだ。 「あたしも・・・好き」 ・・・え?何?今幻聴が聞こえたような・・・ 「あんたのことが大好きって言ってんで・・・モガモガ」 幻聴じゃなかった・・・いや、危なかった。こんな大声を他の宿泊客に聞かれたら即追い出される。・・・しかし。 「これ夢か?」 スッ、と手が伸びて頬を抓る。古典的だが、確かに現実のようである。 「夢じゃない?」 コクコクと頷くハルヒ。ここでいまだに口を塞いだままであったことに気づく。 「おわっ、す、すまん・・・」 「まったく、部下が団長の口を塞ぐなんて、団員にあるまじき行為よ!」・・・まことに仰るとおりでございます。 「塞ぐならこっちでしょうが!」 ・・・俺の唇は、ハルヒの唇で塞がれた。 次に意識を取り戻したのは布団の中だった。あれは夢だったのだろうか。 時計に目をやるとまだ6時半で、みんな熟睡しているようだ。もちろんハルヒも。 ・・・閉鎖空間?いや、あの時俺の隣(ハルヒと逆)には古泉がいたのは確か・・・って、古泉はそれの専門家だからこれじゃ決め手にならん。 しかしその疑問はすぐに解決された。なぜなら、ハルヒの手と俺の手が握られていたことに気づいたからだ。 ・・・その手を離そうとしたがやめておいた。 ハルヒに夢で終わらせたく無かったから。 なぁ、あの時お前はいつから起きていたんだ? 「フフ。やはり気づいていましたか。」 古泉によると今回の件も特殊だというらしい。 神人が存在しない閉鎖空間だったとか、極めて感知するのが難しい空間だったとか、初めから近くにいたことで偶然入り込むことが出来たようだとか 言っていたが、閉鎖空間内での光景がフラッシュバックして大半は頭に入っていなかった。 「あの閉鎖空間の発生で何か世界に困ったことは?」 「起きていないですね。あ、困ったことではないのですがただ一つだけ変化が。」・・・何だ? 「あなたと涼宮さんの絆がより深いものへと変化したようです。」 そのまた次の週。不思議探索の日にまたも俺とハルヒ以外欠席となった。古泉の根回しだろうか。 ハルヒは特に非難することもなく、俺の奢りの缶コーヒーを飲みながら歩いている。 「あ、そうそう。商店街の福引券がまた1回分集まったのよね」と、いつのまにか丁度福引所の前に着いていた。 開幕と同時に特賞を失った福引と言うものはまるで全く弾まないバスケットボールのようである。 弾まないバスケットボールで観客を沸かす試合が出来ないことは商店街の方が一番よく分かっている。 そう、つまり特例として特賞をもう1本入れて客引きを図っていたのである。・・・が、ハルヒが来てしまったものだから大変。 流石に彼らの頭にも一般的な確率論が入っているはずだろうからそんな事態が起きることはまず予想しないであろう。 しかしそれでも“もしかしたら”が同じ比率で彼らの頭を蝕んでいるようであり、またそれが顔色を悪くさせる要因のであることが俺にも分かってしまった。 ここは俺が助けの手を差し伸べてやらなければなるまい。とまたも自分を誤魔化しつつハルヒに耳打ちする。 「3等の映画鑑賞券が当たったら丁度2人で行けるな」